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第78話

山口清次は「何が食べたい?」と尋ねた

「上手な料理は何?」

「全部作れる。」

「じゃあ、玉子炒飯が食べたい。コーンとソーセージ、それから少しレタスも入れて。」

「分かった。食材を買ってくるよ。」山口清次は自分の携帯電話をテーブルに置いた。「携帯をここに置いておくよ。保姆が電話をかけるから、その時に病室の番号を伝えて。」

「うん。」

由佳は彼を見つめて頷いたが、目には生気がなかった。

彼が応えてくれるとは思わなかった。

もしかして、彼の心の中に少しは自分の居場所があるのだろうか?

そんな考えが頭をよぎったが、すぐに振り払った。

由佳、もう自分に甘くなるのはやめよう。彼はあなたを好きではないんだから。

明日は離婚するのだから。

もし今回を逃したら、もう一度勇気を持って申し出られないかもしれない。

テーブルの上の携帯が鳴った。

由佳は画面の来電表示が見えず、ぼんやりとした緑の光だけが見えた。通話ボタンを押すと、女性の声が聞こえた。「清次、食事は済んだ?」

「私です。」由佳が答えた。

「由佳?」歩美が驚いて尋ねた。「清次はどこ?」

「彼は食材を買いに行ったの。」

「食材を買いに?家には保姆がいるんじゃないの?」

由佳は唇を曲げ、心の底から悪意が湧き上がってきて、わざとこう言った。「保姆はいない。彼が食材を買いに行って、私にご飯を作ってくれるの。」

「由佳!」歩美は怒り、冷笑して嘲った。「清次がご飯を作ってくれたからといって勝ち誇った気にならないで。どうせ離婚するんだから!」

「どうしたの?嫉妬してるの?」由佳は冷静に言った。「録音しているのを忘れないでね。」

彼女は嘘をついていなかった。山口清次は仕事が忙しく、電話をよくかけるので、万が一のために自動録音を設定していた。

「喜ぶんじゃない!」歩美は怒って電話を切った。

由佳は少し笑って、携帯をテーブルに戻した。

彼女を怒らせるのは爽快だった。

しばらくして電話がかかってきた。今度は保姆からで、彼女の新しい病室を尋ねてきた。

由佳が病室番号を伝えた。数分後に保姆が来て、心配した顔で尋ねた。由佳が大丈夫だと知ると、持ってきた物を整理し始めた。

「奥様、食事は済んでいますか?何か買ってきましょうか?」

「大丈夫、清次さんが買ってきたわ。」

「もうすぐ八時ですが、今晩病院に
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