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第83話

由佳は喉の奥に痛さを感じ、口元がどうしても下がってしまった。

 三年前、彼らは肩を並べて市役所に入り、結婚した。

 三年後、手をつないで市役所に入り、離婚する。

 これが、彼が最後に堂々と彼女の手を握る瞬間だった。

 今日をもって、二人はもう夫婦ではない。

 二人は違う道に向かって歩く。

 彼は心から愛する人と結婚し、白髪になるまで共に過ごす。彼女は是非を離れて、自由に生きる。

 これからは、見知らぬ道を行き、それぞれが幸せであることを祈る。

 運転手とおばさんはその場に立ち、互いに目を合わせ、一斉にため息をついた。

 由佳と山口清次は市役所のホールに入った。

 職員が近づき、目の前のハンサムな男性と美しい女性を見て、結婚窓口を指さして言った。「結婚の方はあちらで並んでください。注意事項を確認してくださいね」

 「私たちは離婚しに来ました」山口清次が言った。

 職員は一瞬驚き、別の窓口を指さした。「離婚はあちらで並んでください」

 山口清次は由佳の手を引いてそちらに向かった。

 職員は理解できず、離婚したがっている夫婦が手をつないで来るのは初めて見たので、不思議に思った。

 「人が多いので、順番待ちしなければなりません。あちらで座って待ちましょう」

 「わかった」

 由佳は携帯をいじって時間を潰すことができないので、周りの声に耳を澄ませることにした。

 結婚の列は甘く幸せそうで、離婚の列は男も女もいつも言い争いをしていた。

 大勢の前で過去のことを蒸し返して大騒ぎする人もいた。

 離婚を突然後悔して取りやめようとする人もいた。

 全てが混沌としていた。

 由佳と山口清次のように和やかに離婚しようとする夫婦は稀だった。

 突然、山口清次の携帯の着信音が鳴り、彼はポケットから携帯を取り出して通話ボタンを押した。「もしもし、お兄さん?」

 「清くん、由佳ちゃんと一緒にすぐに病院に来て、祖父が突然意識を失って倒れたんだ!非常に危険で、今緊急治療中なんだ!状況は非常に悪いとお医者さんが言った!」

 山口清次は胸が震え、顔が青ざめた。「わかった!すぐに行く!」

 山口清次は由佳を引っ張って外へ向かった。

 由佳は尋ねた。「どうしたの?」

  「兄からの電話だった。祖父が突
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