第86話

「由佳ちゃん、頭はどうしたんだ？どうしてケガをしたんだ？ひどいのか？」と、おじいちゃんは由佳の頭に巻かれた包帯を見て、かすれた声で弱々しく尋ねた。

おじいちゃんはこんなに病気が重いのに、自分の小さなケガを心配してくれる。由佳は胸が詰まり、涙が一気に溢れ出た。

「どうしたんだ？痛いのか？」と、おじいちゃんは彼女の悲しげな顔を見て、心配そうに尋ねた。

由佳は急いで首を振った。「おじいちゃん、心配しないで。ただの小さなケガで、大したことない。全然痛くないよ」

「自分の体を大事にしないといけないよ。おじいちゃんみたいにならないで。おじいちゃんの体はもう持ちこたえられないんだ」と、おじいちゃんは力なく言った。

「そんなこと言わないで、おじいちゃん。おじいちゃんの体は必ず良くなるし、長生きするよ」由佳の目には涙がいっぱいに溜まっていた。

「まるで子供みたいだな。泣き出して」おじいちゃんは手を伸ばして由佳の顔の涙を拭った。

「おじいちゃんが元気なら、私は泣かないよ」由佳はかすれた声で、涙声で言った。 「由佳ちゃん、おじいちゃんは年を取ったんだ。誰しもこの日が来る。おじいちゃんは覚悟ができているんだ。おじいちゃんは怖くない。だから、由佳ちゃんも怖がらないで。いいか？」 由佳は唇をかみしめたが、結局こらえきれず、ベッドに顔を埋めて大声で泣き出した。

彼女は分かっていた。人は誰しもこの日が来ることを。

自分の祖父母や父親、たくさんの経験をしてきたからこそ、受け入れたくなかった。

どうやって受け入れられるだろうか？最も愛してくれるおじいちゃんがもうすぐいなくなってしまうなんて。

「いい子だから、もう泣かないで」おじいちゃんは由佳の頭を優しく撫でた。

山口清次は前に出て由佳を抱き起こし、優しくなだめた。「もう泣かないで、由佳ちゃん。おじいちゃんは元気だよ」

由佳は涙を拭いながら微笑み、「本当に私は馬鹿だ。おじいちゃんは元気なのに、どうして泣くんだろう。笑うべきなのに」 山口清次は彼女の作り笑いを見て、唇をかみしめ、手で彼女の涙を拭った。

「清くん、由佳ちゃん、ここには私たち三人だけだから、率直に話そう。君たち今日は離婚するつもりだったんだろう？もしおじいちゃんの体調が急変しなければ、もう離婚していただろう？」 由佳と山口清次は互いに視