共有

第81話

山口清次は目を伏せ、五本の指を互いに絡ませて前に置き、人差し指で時折軽くテーブルを叩いていた。

 「つまり、あの二人はあの女優のファンで、アイドルが苦しむのを見かねて、復讐しに来た可能性があるってこと?」

「ただの推測です。真実かどうかは証拠に基づかなければなりません」

 女性警察官はこの推測には一理あると感じた。

 昨日、由佳が山口清次と加波歩美の間に割って入ったと報道されたばかりだ。

 ファンたちは真実を知らず、加波歩美のために怒っている。

それで、過激なファンが由佳という「浮気相手」に復讐しに来たというわけだ。

 容疑者二人が普段の生活で接点がなかったのも無理はない。彼らは元々面識がなく、ただ加波歩美のファンで同じ考えを持ち、この事件を計画したのだろう。

「少々お待ちください。電話をかけてきます」女警察は携帯電話を手に部屋を出た。

 男性警察官は適当に由佳にいくつかの質問をした。

 しばらくして、女性警察官が携帯電話を持って戻ってきた。「山口さん、推測が当たりました!容疑者二人の携帯電話にSNSがインストールされており、それぞれの電話番号でログインしたところ、彼らは確かに加波歩美のファンで、彼女を応援していました。二人はネット上でしばしば罵り合いをしており、プライベートメッセージの記録もありました。削除されていましたが、復元可能です」

「手がかりがあって良かったです」 男性警察官は立ち上がり、「では、今日はこれで終わりです。山口さん、お疲れ様です。事件に進展があれば、必ずご連絡します」

「はい、ありがとうございます。お願いします」

 由佳は警察を見送ると、山口清次がまだソファーに座ったままで、さっきの姿勢を崩さずにいるのを見た。

 「さあ、離婚の手続きをしに行きましょう」

 山口清次は頭を垂れ、顔の大半が陰に隠れ、表情は読み取れなかった。

 「清くん」彼が黙ったままなので、由佳はもう一度名前を呼んだ。

 「うん」山口清次は我に返り、ソファーから立ち上がった。「行こう」

 二人は車に乗り込んだ。

 由佳は窓の外の景色が見えないので、シートに寄りかかって目を閉じて休んでいた。

 車内は静まり返り、二人の呼吸音だけが聞こえた。

 しばらくして、運転手が話しかけた。「旦那様、奥様、着き
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status