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第538話

「お待たせしてごめんなさい」

「いや、ちょうど着いたところだよ」賢太郎は由佳を頭から足まで見回し、「額の傷はどうしたんだ?大丈夫か?」

「大したことないの。ちょっと転んだだけ」

「何年も会っていないけど、大学の頃と変わらず綺麗だね」

「そんなことないよ」由佳は少し恥ずかしそうに笑った。「慶太、友達を紹介するね。この二人は私の親友で、こちらが高村、そしてこちらが北田。車に残っているのは私の姪っ子の沙織です」

高村は笑顔で「イケメンさん、こんにちは。高村です」と挨拶した。

悲しみの感情が高村に長く残ることはなく、彼女はすぐに元気を取り戻して、再び明るい表情を見せていた。

北田は軽く頭を下げて、「こんにちは、北田です」と挨拶した。

賢太郎は高村に目を向け、一瞬視線を止めてから北田の方に向き直り、紳士的に笑顔を浮かべながら頭を下げた。「どうも、賢太郎です。由佳の先生です。月影市に着いたら、ぜひ写真について色々とお話ししましょう」

この言葉は北田に向けられた。

北田も笑顔で返した。「それは楽しみですね」

賢太郎の後ろからもう一人、車から降りてきた男性が近づいてきて、自己紹介した。「美女たち、こんにちは。僕は賢太郎のアシスタントをしています。智樹って呼んでください」

由佳は眉を上げて言った。「あなたが村の智樹助教?」

「そうです、僕です」

「そろそろ出発しようか」賢太郎が提案した。

「そうだね」

それぞれが車に戻り、月影市へ向かって出発した。

月影市は隣の県、虹崎市の南に位置しており、地理的な条件と気候のおかげで一年中温暖で、自然の景観が美しい風光明媚な場所だった。風景撮影の目的地としても最適だった。

車の中で、副席に座っていた沙織が後部座席の由佳に振り返って言った。「おばさん、さっき彼らの車の中に誰かいたの、気づいた?」

「え?何のこと?」由佳は首をかしげた。

「私、さっき見たんだけど、彼らの車にもう一人乗っていたみたいで、まだ降りてきていないの」

「そう?」高村は運転席から前をしっかり見つめながら答えた。「気づかなかったわ」

「そりゃあ、イケメンを見るのに夢中だったからでしょ」北田が冗談を言った。

「私も気づかなかった」と由佳は言った。

高村は真面目な顔で言った。「だって、イケメンは見るだけで幸せになれるんだから、少しくらい見
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