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第334話

あき、一聞きして女性の名前だと分かった。

清次は確信していた。由佳には「あき」という友達はいなかった。

さっきの状況を思い出し、清次は、あきがかつて由佳が産んだ子供ではないかと疑った。

由佳は眠りながら、少し口を動かしたが、何も答えなかった。

清次は諦めず、由佳の耳元に顔を近づけて、ささやいた。「由佳、あきって誰?」

「あきって誰?」由佳は小さく呟いた。

「そう、あきって誰?」

「あきは……」

由佳がそう言いかけた瞬間、突然頭を押さえ、体を丸め、苦しそうな表情を浮かべながら、「頭が痛い!痛い!」と呻いた。

清次はそれを見て、すぐに手を伸ばして、彼女のこめかみを揉みながら優しく言った。「無理に思い出さなくていいよ、ゆっくり休んで」

しばらくして、由佳はようやく落ち着き、深い眠りに戻った。

清次は由佳の安らかな寝顔をじっと見つめ、深い思いを胸に秘めた。

彼は由佳の服を整え、布団をかけ直し、ベッドのそばにしばらく座ってから、静かに部屋を後にした。

……

翌朝6時、外はまだ暗かった。由佳はぼんやりと目を開けたが、頭痛がひどくて裂けそうだった。

彼女は再び目を閉じ、しばらくしてからようやく体を起こした。

昨夜のことを思い出そうとしたが、酔いが回っていて何も覚えていなかった。

ぼんやりと、夢の中で清次を見た気がしたが、それだけだった。

今、自分が着ているのは保温インナーだけで、北田たちが自分の服を脱がせてくれたのだと思い込んでいた。

由佳は洗面を済ませ、少しスマホをいじってから、7時過ぎに高村に電話をかけた。

だが、応答はなかった。

次に北田に電話をかけたが、やはり応答はなかった。

二人ともまだぐっすり眠っているのだろう。

昨日は酒をたくさん飲んだが、あまり食べなかったせいで、由佳のお腹はぐうぐうと鳴っていた。彼女は先にホテルのレストランで朝食を取ることにした。

外に出ると、廊下の端で人影がさっと過ぎるのが見えた。その背中はまるで清次のように見えた。

由佳は一瞬息を飲んだが、もう一度よく見ると、その影はすでに消えていた。

彼女は思わず目を擦った。

幻覚だったのだろうか?

まだ完全に目が覚めていないせいかもしれない。

由佳が朝食を終えると、高村と北田もようやく目を覚ました。

昨日の予定では、夜にオーロラを見に車で出かける
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