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第338話

清次の体が硬直し、指先が震え、しばらくぼんやりとした後、ようやく「違う」と返信した。

清次はスマホの画面を見つめたが、由佳からの返信はなかなか来なかった。その間、心の緊張が次第に増し、突然落ち着かなくなった。

彼は、由佳が自分の正体を見破るのを恐れつつ、同時に彼女が自分を見破れないことも怖かった。

由佳も画面を見つめ、さらに疑念を深めていた。

この返答で、彼女の疑惑はますます強まった。

本当に太一の友達なのか?

太一の友達がどうして彼の代わりに返信するのだろう?

まだ一度も顔を見せたことのない、あの太一の友達……

由佳の脳に、一人の男性の姿が浮かんだ。

彼女は自嘲気味に笑って、頭を振って、その考えを振り払った。

「由佳、疲れたんじゃなかった?どうして休みに戻らないの?」高村と北田が階段を上がってくると、由佳がスマホを握りしめ、階段の踊り場に立っていたのを見つけた。

「部屋が少し息苦しくて、外の空気を吸いに来たの」

部屋が息苦しいなら、窓を開ければいいじゃない?オーロラも見られるのに。

高村は由佳を怪しそうに一瞥すると、勢いよく彼女の隣に駆け寄り、素早く彼女のスマホを一瞥した。

由佳は反射的に画面を消したが、少し遅かった。

高村は「太一」という名前がLineの上部にちらりと見えた。

彼女はニヤニヤと笑いながら、「ああ、なるほどね、太一とチャットしてたから隠れてたんだ!そういうことか!」

由佳はすぐに高村が誤解していることに気づき、「違う、そんなことじゃないの!」とそれを否定した。

だが高村には、それが弁解にしか聞こえなかった。「言い訳しなくてもいいよ、分かってるって。太一は背が高くてハンサムだし、清次ほどお金持ちじゃないかもしれないけど、彼には金持ちの友達がいるから、そんなに貧乏じゃないはず。それに、彼のあそこはきっと大きいわよ」

何を言ってるのか全く分からないと由佳は思った。

「本当に違うのよ。ただ、彼がちょっとおかしいなって思っただけ」

由佳の言葉を聞いた高村は膝を叩いて言った。「分かった!彼がどこかおかしい理由が分かったわ!」

「どこが?」

「覚えてる?国内の空港で誰かがあなたにぶつかった時のこと。あの時の男、たしか太一だったと思う。彼はあの時からあなたに一目惚れしたんだよ。だから、今ちょっと変に感じてるんじゃない?
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