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第335話

気がついた時には、すでに午後2時を過ぎていた。

彼女たちはホテルに戻り、昼食を取ることにした。

ホテルのレストランに着き、由佳が食事を取りに行った時、突然、見覚えのある人影が目に入った。

彼女がよく見てみると、驚いて言った。「太一?」

声を聞いて、太一が振り返って、眉を上げて笑った。「偶然だな」

そう言いながらも、彼の顔には驚いた様子は一切なかった。

「本当に偶然だね。まさかあなたたちもここに来ているとは思わなかった」

「ここ、結構有名だからね。友達が来てみたいって言ってたんだ」

由佳は太一の後ろをちらりと見たが、噂に聞いた彼のイケメンな友達の姿はなかった。

太一は彼女の意図を察して、からかうように説明した。「彼は気晴らしに外に散歩に行ってるよ」

「そうなんだ。あなたたちはいつまでここにいる予定なの?」

「まだ分からない。友達次第だ」

「ここを出たら、そのまま帰国するの?それとも他に旅行の予定があるの?」

「それも友達次第だ」太一は同じ答えを繰り返した。

「私たちはこの後、リンガス島に行く予定なんだけど、一緒に行かない?」

太一は由佳の誘いに少し驚いた様子を見せた。

彼は軽く拳を作り、口元に当てて咳払いをし、「友達に聞いてみるよ。Lineを交換しておこうか?後で教えるよ」

「いいわ」由佳はQRコードをスキャンして申請を送り、ふと顔を上げて尋ねた。「太一、もしかして私のこと知ってるの?」

太一は無意識にうなずいた。

顔を上げて由佳の探るような視線に気づくと、落ち着いて説明した。「ニュースで見たことがあるんだ」

「それで通りだ」

「じゃあ、先に行くね。友達に聞いたら連絡するよ」

「分かった」

由佳は彼の背中を見つめ、心の中に一抹の疑念がよぎった。

彼女はなんとなく太一が少し奇妙な人物だと感じたが、具体的にどこがとは言い切れなかった。

昼食後、由佳たちはホテル裏にある雪山を登ることにした。

そこは比較的低い山で、地理的に見晴らしが良く、山頂からサマーアイランド全景を見下ろすことができる。

厚手の服を着て、雪の中を歩くのは大変で、途中で由佳は息を切らして、汗だくになってしまった。

三人はお互いに支え合いながら、一歩一歩慎重に進み、ようやく山頂にたどり着いた。

由佳は頂上から下を見下ろし、サマーアイランド全体が一望でき
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