第314話  

その建物は典型的なゴシック様式で、タワーが高くそびえ、線がはっきりしていて、シンプルで明快、壮大な感じがする。丸いドーム型の窓や、並んだ細長い柱が特徴で、両側には2体の人物彫刻が立っている。

　北田さんは高村さんの手から買い物袋を受け取り、由佳に向かって指を差して言った。「由佳ちゃんに撮ってもらおう！」

　北田さんはプロのカメラマンで、由佳があまり乗り気でないのを見て、もっと関与してもらい、徐々に活気づいてほしいと思っていた。

　「由佳ちゃん、私の写真を撮って！」と高村さんは由佳が断る間もなく、スマートフォンを由佳の手に押し付けた。

　由佳は仕方なく、適当な角度で高村さんの写真を数枚撮った。

　高村さんがスマートフォンで写真を確認すると、驚いて言った。「わぁ！すごい、私をこんなに綺麗に撮ってくれた！」

　北田さんも見に行き、笑いながら言った。「すごいね。次からは由佳ちゃんが私たちの専属カメラマンになってもらうといいんじゃない？」

　「え？」由佳は眉をひそめた。

　高村さんも賛同して、「そうそう、私たちの専属カメラマンになって！断る理由なんてないよ、旅行に来てるのに写真も撮らないの？それならカメラマンになってもらおう！」と言った。

　「わかった」由佳は承諾した。

　彼女は確かに他のことに気を取られて、気分転換をした方が良いと思った。

　夕食は高村さんが様々な攻略を見た結果選んだ中華料理店で、火鍋のお店だった。

　高村さんによれば、「この寒い天気の中で、熱々の火鍋を食べると、もう最高に気持ちいいよ！」とのことだった。

　店内の客はほとんどがアジア系で、店員も少し日本語を話せる。

　三人はそれぞれ数種類の具材を注文し、つけだれを取りに行った。

　突然、誰かが由佳にぶつかった。

　由佳が振り向くと、若い男性が顔を少し赤らめ、申し訳なさそうに彼女を見つめ、彼女の服をちらっと見てから、英語で謝った。「Sorry. I'm so sorry. I didn't mean it.」

　由佳は彼の視線に従って、自分の服のぶつかった部分を見た。そこにはソースの汚れが付いていた。

　由佳は英語で返答した。「It’s OK,be a bit more careful.」

　由佳はつけだれの皿を持って席に戻り、いくつかのティッシュで表面のソースを拭き取っ