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第317話  

清次は指輪を長い間見つめ、その表情は曇っていた。

 彼は再び指輪を箱に戻し、箱を閉じてから、階段を上がっていった。

 夜の8時、会所の個室で。

 照明は暗く、騒がしい音が響いている。

 大網貴行が個室のドアを開けて入ると、吉田和也たちに挨拶し、周りを見渡してから隅のソファに向かって歩いた。

 清次の隣に座り、口を開いた。「どうしてここに座っているんだ?」

 「静かだから」清次は平静な声で答えた。

 「離婚したのか?」大網貴行はポケットからタバコの箱を取り出した。

 「うん」

 大網貴行は彼を一瞥し、タバコを一つ投げた。

 清次は大網貴行の火でタバコに火をつけ、一口吸った。

 「彼女は今、どこにいる?」

 「友達とノルウェーで旅行している」

 清次がそんなに冷静でいるのを見て、大網貴行は驚いて彼を見た。「そんなに簡単に手放したのか?もし僕が好きな女性なら、こんなに簡単に離れるなんてことはしないけどな!」

 清次は沈黙し、指でタバコの灰を払い落とし、再び口に加えた。

 そんなに簡単に手放すわけがない。

 もし本当に簡単に手放せるなら、彼も森太一が彼女に位置情報を取り付けることはなかっただろう。

 もしあの事実を突然知らなかったら、彼は今頃ノルウェーにいたかもしれない。

 大網貴行は事情を知らず、清次が黙っているのを見て、本当に手放すつもりなのだと思っていた。「清くんらしくないね」

 「時間が必要だ」

 清次は目を閉じ、ソファの背もたれに寄りかかり、唇をわずかに開けて、一筋の煙が空中に漂うのを見守った。煙は円を描きながら上昇し、やがて消えていった。

 あの件は、まるで蜜蜂が彼の心の中を飛び回り、一つの針を刺していったかのようだった。

 針は深く肉の中に刺さり、そのまま引き抜かれることがなかった。

 理解しない限り、その針は時折彼に彼女が他の男と子供を持っていたことを思い出させた。

 しかも、彼が彼女を愛してからその事実を知った!全くの予想外で、突然のことで、どうしようもなかった!

 手放すなんてできない。

 彼は由佳を心から愛しており、彼女と過ごした3年間も惜しいと思っている。

 彼女は目立たないジャスミンのように、静かに、知らぬ間に、彼の生活の隅々に浸透してきた。

 いわゆる時間と共に情が芽生えるというのは、こうい
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コメント (1)
goodnovel comment avatar
yas
ほんっつつっとに!!!! 馬鹿で浅はかなやつが次から次へと!!!(`言´)イライラ…
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