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第320話  

 由佳が電話を切り、席に戻った。

高村さんは由佳の表情が少し沈んでいるのに気づき、「さっきの電話、誰からだったの?」と尋ねた。

「友達からよ」由佳は下唇を噛みながら答えた。

「ふん、いくつ友達がいるか分かってる。その友達って山口さんのことじゃないでしょうね?」

由佳は沈黙した。

高村さんは自分の推測が当たったことに驚き、こう言った。「彼がまた電話してきたの?引き止めようとしてるの?由佳ちゃん、ダメよ!」

「そんなことはないわ」由佳は断固として言った。「さっきのは彼の友達からの電話で、彼が酒を飲んでいるから、ちょっと説得してほしいと言われたの。彼は私を助けるために怪我をしたんだから、無視するわけにはいかないわ」

北田さんは言った。「由佳ちゃんがそんなにおろかなことはしないと信じているけど、今は彼女に少し時間を与える必要があるね」

2時間後、由佳たちはトロムソに到着した。

空港を出てから、バスでホテルに向かった。

バスの窓から外を見ると、道の両側にはまだ雪が積もっていた。

高村さんが予約したホテルはオーロラ・クリオだ。

「ガイドブックによると、このホテルは埠頭の近くにあって、景色が素晴らしいんだって。しかも最上階には屋外の温水プールがあって、氷と火の両方を体験できるわよ」と高村さんは説明した。

ノルウェーの冬に、最上階の屋外で温水プールに入るのは、確かに特別な体験だろう。

ホテルにチェックインした後、三人は荷物を整理し、簡単に休憩を取った後、ホテルのレストランで食事をした。

ホテルのレストランは埠頭に面しており、美味しい料理を食べながら景色を楽しむことができた。

由佳が料理を持って高村さんの対面に座ったとき、誰かが「姉さん?」と呼びかけた。

由佳が顔を上げると、斎藤颯太が驚いた表情で近づいてきた。

由佳は彼に微笑んで頷いた。

高村さんは意味深な目で由佳を見て、笑いながら「おや、また会ったわね。斎藤さんたちもここに泊まるの?」と言った。

「うん」颯太は彼女たちのテーブルの横に立ち、笑顔で小さくてかわいい前歯を見せた。彼は陽気で明るい雰囲気を漂わせていた。「でも残念ながら、私たちは明日には出発する予定だよ。今来たの?」

「うん。もうオーロラを見た?」

「見たよ!」そう言いながら、颯太はスマートフォンを取り出し、写真をテーブルの上に
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