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第311話  

医者は清次の疑念を理解できなかった。「そうですね、子供を産んだ女性は皆こんな感じです。由佳さんは母親の中でもかなり回復が良い方で、子供を産んだとは全くわからないほどです。長男は三、四歳ですよね?」

 林特別補佐員は息を呑み、息をひそめて清次をちらりと見た。

 すると、清次の顔色は包拯よりも真っ黒になっていた。

 清次の瞳は深い淵のように暗く、低い声で問うた。「診断ミスはないと確信していますか?」

 「診断ミス?」医者は疑問の表情を浮かべた。

 清次ははっきりとした。「現在、私には子供がいません」

 医者の顔が一瞬、驚いた。

 清次には子供がいない?

 つまり、由佳が結婚詐欺をしていたのか?

 男は不倫、女は結婚詐欺、二人は本当にピッタリだ。

 山口の目を見て、医者は慌てて説明した。「絶対に診断ミスではありません。間違えるはずがありませんし、この病歴には他の医者の署名もありますので、信じられないなら彼女に聞いてみてください!」

 清次の表情が依然として青ざめていたため、医者はさらに付け加えた。「山口さん、先日由佳さんとの結婚三周年でしたよね? 由佳さんの体の回復状況からすると、出産は少なくとも三、四年前のことです……」

 言いたいのは、結婚前のことなら由佳が意図的に隠していても不思議ではないということだ。

 「わかった、あなたは出て行ってください」清次は比較的冷静に言ったが、彼がどれほど我慢しているのかは本人だけが知っている。

 「わかりました」医者は安心し、急いで退室した。

 清次は無表情で林特別補佐員に言った。「病歴にサインをした別の医者を呼んできてください」

 「はい」林特別補佐員は応じて去って行った。

 扉を開ける直前に、清次は「口外しないように」と付け加えた。

 「了解しました」

 この件が真実であろうとなかろうと、広まると由佳の名誉に関わるだけでなく、清次の顔にも泥を塗ることになる。

 数分後、林特別補佐員は別の医者を呼んできた。

 別の医者もまた非常に確信を持って答え、生育歴のある女性とない女性の子宮の違いについて説明をした。

 清次は手を振り払い、目に深い感情を湛えながら重い声で言った。「出て行ってください」

 医者が黙って退室した。

 林特別補佐員は静かに後を追い、清次が一人で考える時間を確保した。

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コメント (1)
goodnovel comment avatar
yas
えぇーーー????? 今まで主人公の一人だった由佳側の話にそんなそぶりあったかー!?!? でも、あやしいのはあのおばさんちにいる子だよね?ロサンゼルスだかサンフランシスコの!ロスかな?
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