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第293話

「叔父さんは沙織のことがとても恋しいよ。今、叔父さんは家にいるんだ」清次は携帯を回しながら周囲の風景を見せた。

「ふん!信じないもん!だって叔父さんにはおばさんがいるもん。どうして私のことなんか恋しくなるの?」そう言いながら、沙織は清次の後ろを覗き込んで、「叔父さん、おばさんはどこ?」

清次の表情が一瞬固まった。「おばさんは病気で、今は病院にいるんだ」

沙織の小さな顔に心配の表情が浮かんだ。「えっ?沙織は注射が一番怖いの。おばさんはいつ帰ってくるの?」

「あと数日かな」

「叔父さん、おばさんが注射したら、ケーキを食べさせてあげて。ケーキを食べたら痛くなくなるよ」

清次は思わず笑った。「わかったよ、叔父さんがおばさんにケーキを食べさせてあげるよ」

清月は携帯を受け取り、沙織に言った。「沙織、宿題をやりに行きなさい」

海外の現地時間は国内時間より16時間遅れていて、虹崎市のこちらは午前11時だが、清月の方ではまだ前日の夜で、沙織はちょうど夕食を食べたところだった。

清月の言葉を聞いて、小さな女の子は口をとがらせた。「叔父さんともっと話したいのに」

清月はこれが沙織の宿題を避けるための手段だとわかっていた。

「宿題をやらないとケーキは食べられないわよ」

沙織の小さな顔にすぐに困惑の表情が浮かび、叔父さんとケーキの間で迷った末、小さな女の子は最終的にケーキを選び、唇をとがらせながら清次に手を振った。「叔父さん、宿題をやりに行くね。バイバイ!」

「行ってらっしゃい。しっかり勉強するんだよ。叔父さんも時間があれば会いに行くから」

画面には清月だけが残った。

彼女は清次の顔色を見て、「最近、ちゃんと休んでないんじゃない?すごく憔悴しているわよ」と尋ねた。

「うん」清次は淡々と答え、タバコを一口吸った。

「いつからタバコを吸い始めたの?」清月は驚いた。

「最近だ」

「株主総会の結果を知ってるでしょう?おじいさんはやっぱりあなたを大切に思っているわ」

清次は視線を落とし、「知ってる。僕はおじいさんに申し訳ないと思っている」

「何が申し訳ないの?もしかするとおじいさんは亡くなる前に考えを改めて、あなたと由佳を一緒にするべきではなかったと思ったのかもしれないわ」

清月のこの推測はあり得ないことだったが、清次は何も反応しなかった。

清月はまた言
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