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第297話

由佳はしっかりと骨壺を抱えて車から降りた。

清次は事前に連絡を入れており、沙弥が彼らを後ろの別棟に案内した。

中に入ると、目の前の一面の壁には四角い箱がずらりと並んでおり、それぞれの箱には骨壺が収められていた。

往生堂の中の骨壺にも区別があった。

一番下の段には一般市民の骨壺が安置され、二番目の段には在家修行の居士の骨壺が置かれ、三番目の段には堕胎された赤ちゃんの霊位が安置されていた。僧侶の骨壺は別にある海会塔に収められていた。

沙弥の指示に従って、由佳は自分の手で骨壺を寄託する箱に収め、鍵をかけた。

その後、沙弥は彼らを寺の本堂の後ろ、西側にある往生殿へと案内した。

往生殿は高い場所にあり、前には高い階段があった。

階段は九九八十一段あり、これは九九八十一の困難を乗り越えた後に、初めて正果を修め、極楽往生できることを象徴していた。

清次は由佳の手を握り、敬虔な目で、一歩一歩階段を登った。

殿内には西方三聖、すなわち阿弥陀仏、観世音菩薩、大勢至菩薩が祀られていた。

由佳は沙弥に従って壁の後ろに回り込むと、そこには無数の黄色い位牌が供えられているのが見えた。

沙弥は説明した。「位牌は仏教徒の私たちにとって、西方極楽世界(仏教において、死後に行く場所)への通行証です。黄色い位牌は超度蓮位で、生者が故人のために立てたもので、故人を超度するためのものです」

「堕胎された赤ちゃんのために位牌を供えることで、長期間にわたって教えを聞き、三宝の力を得て加持され、福徳を積んで早く極楽往生できるように祈ります。また、赤ちゃんの両親が迷いを破り、新しい生活を始める助けにもなります」

「僕たちも彼のために位牌を供えましょうか?」と清次は尋ねるというよりも確信を持った口調で言った。

「はい」由佳はうなずいた。

「供える位牌には名前を記す必要がありますので、お二人で名前をつけてください」と沙弥は言った。

清次と由佳はお互いを見つめた。

清次は言った。「あなたが決めてください」

由佳は寺の中に漂う濃厚な香の匂いを感じながら、「永平と名付けましょう。永遠に平和でありますように」と言った。

「わかりました」

僧侶たちは永平の位牌を立て、位牌の前には清次と由佳が灯した一盞の長明灯が置かれた。

灯が点ったその瞬間、淡い光が静かに揺れ、厳かな雰囲気が漂った。由
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