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第171話

「今日の歩美の誕生日パーティー、僕は行けなかったけど、彼女は何か言ってた?」受話器越しに、大和が笑いながら尋ねた。

山口清次は眉をひそめ、隣の由佳を一瞥し、大和の話が今は不適切だと思った。

「自分で彼女に電話して聞いて。」

由佳は視線を逸らさず、ゆっくりと前に進んでいた。

彼女が受話器の声を聞こえているかどうかはわからなかった。

「こんな絶好の機会に、彼女と一緒にいなかったの?今日は特別な宴会だったって聞いたよ。由佳が知ったら、きっと騒ぎになるだろうね。」

山口清次は答えずに反問した。「他に用事はあるのか?」

しばらく沈黙が続いた後、大和は尋ねた。「山口清次、君はこれからもずっとこのままでいるつもりなのか?」

このままでいるとは、由佳との結婚生活を続けながら、歩美との関係も続けることを意味していた。

山口清次の返事がないまま、大和は話を続けた。「以前、僕は君が一生孤独で過ごすんじゃないかと思っていた。でも歩美と出会って、君にも違う一面があることを知った。歩美は優しくて思いやりのある素晴らしい女性だ。同級生たちもみんな、君がそんな彼女を持っていることを羨ましがっていた。君たちの出会いから恋愛、そして別れまで見てきたけど、なぜ別れたのかは知らない。けれど、再会できたのなら、その縁を大切にするべきだと思う。」

大和は山口清次が由佳と離婚し、歩美と結婚することを望んでいるようだった。

「他に用事がないなら切るぞ。」山口清次は言った。

山口清次がこの話題を避けたがっているのを見て、大和はすぐに話題を変えた。

以前、山口清次が大和に由佳への謝罪を要求したため、大和はいつクラブに来るかを尋ねるために電話をかけてきた。

「由佳にきちんと謝りたい。」と大和は言った。

「彼女に聞いてみるよ。」

山口清次は隣の由佳に視線を向け、彼女の手を引いて言った。「大和があの晩の言葉遣いを謝りたいって。」

あの晩は由佳にとって、本当に辛い経験だった。

夜中に目が覚め、あの出来事の光景が頭に浮かんでいた。

由佳が沈黙しているのを見て、山口清次は眉をひそめ、大和に断ろうとした。

由佳は彼の手を引いて言った。「明日の夜にしよう。」

「無理しなくていい。」山口清次は足を止め、由佳を見つめて言った。

「無理はしていないわ。」

これは理性的な選択だった。

山口清次
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