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第170話

由佳は山口清次の言う「彼女」が歩美を指していることを聞き取った。

山口清次が振り返ると、由佳が洗濯物を持って階段から降りてくるのが見えた。「部屋に置いておけばいいよ。家政婦に任せて。」

「ついでだから。」由佳は汚れた衣類を一階の洗濯室に持って行った。

家政婦はパスタの材料を買って戻ってきた。

「私がやります。」山口清次は食材を受け取った。

家政婦は山口清次が自ら料理をするのは由佳を喜ばせるためだと察し、キッチンを彼に譲り、腕を振るうのを見守ることにした。

山口清次はキッチンに入って、出てきたときにはエプロンを身に着けていた。

由佳はソファーに座っていて、思わず彼を見つめてしまった。

外から帰ってきた彼は、上着を脱いだだけで、中は灰色のシャツを着ていた。首元のボタンが二つ外れていて、袖をまくり上げ、しっかりした腕を露出させていた。下はスラックスのままだった。

この精悍な体にエプロンをつけたのは、少し滑稽に見えた。

山口清次は由佳の視線を捉えて微笑んだ。「どうかした?」

由佳は顔を背け、少し動揺しながら言った。「別に。」

山口清次はキッチンに戻った。

しばらくして、彼は二皿のパスタをサラダとともに運んできた。パスタにはエビが添えられていて、とても美味しそうに見えた。

由佳はダイニングテーブルに座り、山口清次と向かい合った。

「どうぞ、食べてみて。」山口清次はエプロンを外して脇に置いた。

由佳は彼を一瞥し、フォークでエビを一つ取り、口に運んだ。エビはとてもジューシーで美味しかった。

山口清次は由佳の向かいに座り、「久しぶりに自分で料理をしたから、ちょっと手が鈍っているかも。」

「歩美にはよく料理していたんじゃないの?」由佳は彼を見つめ、少し皮肉を込めて尋ねた。

「いや、あれは一度きりだ。」

「そう。」由佳は視線を落として食事を続けた。

山口清次は由佳の顔色を察して「どうして?信じてくれないのか?」

「信じるか信じないかは関係ないわ。私は歩美の家に監視カメラを設置していたわけじゃないから。」

山口清次はこの話題には深入りせず、「これから毎週一度は自分で料理をするようにするよ。」

仕事の関係で、彼が毎日料理をするのは無理だった。

「仕事を優先して。」由佳は彼を見つめ、相手に悟られないような表情を見せた。

山口清次は何も言わな
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