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第8話

「もう無理です。前田さんのお母様の状態は......前田さん、これが最後のお別れになるかもしれません。どうか会ってあげてください」

その瞬間、私の頭の中がぐるぐると回り、めまいがして、耳鳴りと激しい頭痛に襲われた。

「美和、しっかりして!」

達也の声が遠くから聞こえ、私は壁に手をつき、何とか立ち上がった。

母の病室に入ると、母は相変わらず眠り続けていた。

「お母さん、起きてよ」

私は母の頬にそっと手を当てた。

私と母は山の中から一緒に逃げ出したのだ。

母は大学生の頃に人身売買に遭い、子どもが産めないという理由で暴力を振るわれ、殺されかけたこともあった。

その時、赤ん坊だった私が同じように売られてきて、母に託された。それ以来、彼女は私を育ての母として世話をしてくれた。

それから何年も経ち、彼女は命がけで私を連れて逃げ出した。

彼女は私が海市から誘拐されてきたことを知っていたので、私を連れて海市に来たのだ。

幼い頃、食べるものがなかった時、母は自分の食事をすべて私に分け与えてくれた。学校に行くお金がなかった時、彼女は鍋や家財を売って、そのお金を学校に納めてくれた。

私は幼い頃から、彼女が本当の母親ではないことを知っていた。

「どうしてそんなに私に優しくしてくれるの?」と何度も尋ねたことがあった。

そのたびに彼女は微笑んで、私の頬を撫でながらこう言った。

「私は逃げ出した後、本当の母親を探したの。でも、彼女は私を見つけられなくて、うつ病で自殺してしまった。だから、あなたのお母さんに同じ運命をたどってほしくないの。必ずあなたの本当のお母さんを見つけてあげる」

こうして、私たちは十数年も探し続けた。

最後に彼女は私の実の母親を見つけたが、彼女は私を受け入れる気持ちはなかった。

それで彼女は私を引き渡さず、ずっと一緒にいてくれた。

その後、彼女は病気になったのだ。

......

私は思い出から戻り、彼女の手を強く握った。

だが、今回は奇跡は起こらなかった......

......

私は母の遺骨を江城に持って行くことにした。

出発前、達也に支えられた美月が私の前に現れた。

彼女の顔は涙で濡れていた。

「達也からすべて聞いたわ」

「最初からあなたを捨てたかったわけじゃないの。佳奈子があなたのことを品行が悪いって言った
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