共有

第44話

新谷結菜は感謝の意を込めてうなずいて、試しに尋ねた。「中村副会長、いつか会長にお会いする機会があるのでしょうか?今後、会社の行政事務を担当する予定ですので、会長を知らないままでは、万が一失礼をしてしまったらと心配で……」

中村みかは一瞬にして警戒を強めた。

田中健太は先日、新谷結菜さんに対して注意深く観察するように伝えてきた。そして新谷が到着した途端、会長のことを尋ねるなんて、確かにこの女は大したものだ。

この美人が、はるばる三島グループに来た真の目的は何だろう。

「会長は会社にあまりいらっしゃいませんが、もしいらっしゃいましたら、お伝えしますね。新谷さんにお目にかかる気があるようでしたら、連絡しますから」と中村みかは答えた。

新谷結菜は心の中で少しがっかりしていたが、それでも笑いながらうなずいて、「どうもありがとうございます、中村副会長!」と言った。

副会長室に戻ると、この件を田中健太に報告した。

新谷結菜が入社してすぐに自分と会いたがったと聞いて、田中健太は心の中で一層警戒を強めた。

やっぱりこの女は自分のことを狙って来たのだ。

一体どんな目的を持っているのか?

私に近づこうとしているようだが、害をなそうとするか、あるいは色気を使って私を誘惑しようとするのだろうか。

どんな目的であろうが、田中健太は彼女に少し嫌悪感を覚えていた。

そこで彼は決めた。できるだけ新谷結菜と近づかず、さらに自分の正体を彼女に知られてはならない!

......

新谷結菜が入社したその日の夜、田中健太の妻である佐藤まゆみは特別に高級レストランで席を予約し、彼女を誘って一緒に食事をしようとした。

佐藤まゆみの夫として、田中健太は自然と共に出席しなければならなかった。

田中はそれに対し、少し気が滅入っていた。

新谷結菜との距離を保つことに決めたところだったのに、また彼女と食事することになったためだ。

気が滅入っているが、それでも彼はちゃんと準備をして、佐藤まゆみと一緒にレストランへ向かった。

しかしレストランに着いた際、田中健太は気づいた。佐藤まゆみが予約したのは、なんと月光庭園ホテルの空中ガーデンなのだ!

空中ガーデンの宴会場は普通高級客向けで、貸切サービスはいっさい提供しない。しかし、田中健太は結婚記念日にここを貸切で予約した。月光庭園ホテル開業以来
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status