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第37話

佐藤大翔が予約したのは長楽館だと知り、田中健太は少し驚いた。

まさかの偶然だ。というか、長楽館を所有していると小川翔太は言っていたのではないか?

たしかに小川翔太が長楽館で私に宴席を用意したのではないのか?

その時、隣にいた中村拓真は驚いた様子で言った。「大翔、一般人の手が届かない長楽館のゴールデン個室を予約できるなんて、さすがだね!」

佐藤大翔は自慢げに笑みを浮かべて言った。「正直に言うと、長楽館で最も高級なダイヤモンド個室以外では、いくらでも予約できるんだ」

しかし、これは佐藤大翔の自慢話に過ぎない。

実のところ、このゴールデン個室を予約するために、佐藤家の大奥様が自ら顔を出して、多くの代価を払って、何人もの人に頼み込んでから予約できたのだ。

東京でも長楽館の名を知っている新谷結菜は急いで言った。「友達なんだから、そんなに贅沢にする必要はないわ」

「結菜は賓客なんだ。普通の友達とは違うからな」と佐藤大翔は媚びた口調で言った。

そして、田中健太に尋ねた。「義弟さんはどのレストランを予約したんだ?」

田中健太は淡々と答えた。「おもしろいことに、私も長楽館を予約したんだ」

「あはは!」佐藤大翔は大笑いしながら言った。「田中健太、自分の身分をわきまえてくれ。長楽館の最低クラスの個室も予約できないくせに、よくもそんな大きなことを言えるな」

田中健太は淡々と笑って、「大きなことを言ったかどうか、お前には関係ないだろう?そもそもお前を誘うわけでもないのに、余計な心配じゃないか?」と言った。

「ふん、お前のような人間なんて、長楽館の入り口すら跨げないだろうにな!」佐藤大翔は冷たく言い切った。

田中健太が狙いをつけられたのを見て、新谷結菜は心の中で忍びない気持ちになった。

田中健太が佐藤家の入婿であり、佐藤家では金も地位もないことを新谷結菜は知っていた。本当に最高級の店で自分に宴席を用意するなんて、あまりにも現実的ではない。

たぶん面目を保つために、わざとそう言ったのだろうと、彼女は推測していた。

彼女自身も田中健太があまり恥ずかしい思いをさせたくないので、その場を丸く収めるために口を開いた。「あら、そんなことで言い争わなくていいの。同じ場所を予約したなら、いっそのこと一緒に行きましょう」

佐藤大翔は田中健太を皮肉を言った。「まあいいか。結菜
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