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第36話

そこで田中健太は、新谷結菜が入社した後、よくこの女を観察して、何か動きがあれば、常に報告するようにと中村みかに注意を促した。

 中村みかへの指示を終えた田中健太は、午後家を出てタクシーに乗った。佐藤まゆみの親友の新谷結菜を出迎えに空港へ向かった。

 タクシーで空港に到着した田中健太は、到着ロビーに向かう途中、急に一つのメルセデス・ベンツGクラスが急ブレーキをかけ、自分の前に横になって止まった。

 佐藤まゆみのいとこ、佐藤大翔が突然車窓から顔を覗き出し、少し不審そうに眉をひそめて田中健太を見つめ、「田中、何でここにいるんだ?」と尋ねた。

 「まゆみの親友を迎えに来たんだ。君たちはここで何をしている?」

 田中健太は眉をひそめ、車内に座っている人々を見回した。佐藤大翔の他に、中村拓真や佐藤えみもいて、皆知り合いだった。

 佐藤大翔は軽蔑の表情で言った。「親友って新谷さんのことだろう?新谷さんなら私たちがおもてなしするから帰れ!」

 田中健太は鼻息をついて、「帰りたければお前自分で帰れ」と冷たく応えた。

 そしてそれ以上取り合わず、じかに到着ロビーに足を進めた。

 佐藤大翔は怒りで罵ろうとしたが、隣にいる佐藤えみが慌てて注意した。「兄さん、新谷さんがもうすぐ到着するよ。新谷さんにいい印象を与えることが大事だって、おばあちゃんも言ってたじゃない!もし新谷さんがうちの家族の一員になれれば、兄さんの地位も家族の中で超えられないものになるかもしれないから、今はあの役立たずと言い争いはやめときましょう」

 佐藤大翔はその言葉に一瞬で冷静になった

 もう少しで今日の一番大切な目的を忘れてしまいそうだった。

 実際のところ、新谷結菜を出迎えることより、彼女にいい印象を与え、自分と恋愛関係に進ませるほうが一番大事だ。

新谷家は東京で非常に力を持っている。もし彼女と一緒になれれば、自分も簡単に成功を収め、佐藤家も一挙に栄えることになるだろう。

そう考えた佐藤大翔は、田中健太に対する不満を我慢し、皆と急いで降りて、到着ロビーに向かってかけつけた。

ついその時、人波の中で、特に目立った若い美しい女が現れた。

 彼女は栗色の長い髪をし、白いワンピースに身を包み、その美しいスタイルを際立たせていた。

 白磁器のように美しい肌と咲き始める花のように鮮やかな唇を
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