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第9話

桜井玲奈が私を殺すためにわざと仕組んだ真実がついに明るみに出た。

私の父は彼女を裁判にかけた。その日、森下慎也も出席した。結果、桜井玲奈には三十年の懲役刑が言い渡された。

裁判がそのまま終った。

森下慎也はまるで魂を失ったように私たちの家に戻ってきた。

前回、森下慎也と喧嘩して以来、彼ははもうニッカ月以上ここに戻ってきていなかった。

彼の虚ろな表情を見て、私は何とも言えない感情に苛まれた。

彼は狂ったように家の中を探し回り、私の持ち物をすべて引き出していった。

部屋中が散らかる中で、森下は私の服を抱きしめ、そのまま膝をついて座り込んだ。

「千代子、お願い。あなたはいつも僕を理解して、許してくれ」

「お願い、もう一度だけ僕を許して、戻ってきてくれて。どうか僕に償う機会をくれて」

彼はぼんやりと私の服を抱きしめ、膝をついたまま呟き続けていた。

彼の視線はふと何かに引き寄せられた。

彼が本棚の下から本みたいなものを拾い上げた。

それは、私と彼の恋愛を綴った手帳だった。

そこには私たちが一緒に過ごした幸せな時間がよく記されていた。

映画のチケットも丁寧に貼って、二人の思い出を大事にしてきた。

でも、ページをめくるたびにその記録は少なくなった。

それは、いつしか彼が私と会うことをやめたから。

最後に残っていたのは、私一人の独り言だけだった。

「今日も一人で点滴注射を受けてきました。四本も打ったから、手の甲が腫れて痛かったです」

「でも、こんなことくらいで慎也に心配をかけたくないです。彼が昇進したら、ブランド時計を贈ってあげたいな、もっと彼を喜ばせたいですから」

「今日は叔母さんが胆嚢炎で入院しました。痛がる姿を見ると辛いけど、明日の手術がうまくいくように祈ります」

「今日、病室で夜を過ごしていた時、叔母さんが私の頭を撫でてくれました。彼女は『実の息子ですらお世話を嫌がるのに、あなたがいてくれて本当に助かるわ。あなたが私の娘だったら良かったのに』と言ってくれました」

「私、妊娠しました。慎也との赤ちゃんです。このことを彼に伝えるべきか迷っています。彼はこのことを知ったら、喜んでくれるでしょうか?」

「今日、叔父さんが慎也と桜井玲奈の昔のことを話してくれました。彼は話しているうちに涙を流されていました。その姿を見て、私も胸が痛みまし
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