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第2話

私の死亡が確認された後、病院はただ一人の身内である父に連絡を取った。

父が到着したとき、彼の目の前にあったのは冷たくなった私の体だ。

膝をついて泣き崩れていたのは私の父だ。その涙には、娘を失った深い悲しみが込められていた。

看護師に助けられながら立ち上がった父は、苦しみを抑えつつ森川慎也に電話をかけ始めた。

十数回もかけたが、すべて拒否された。

その後、ついに電話は繋がらなくなった。

なぜなら、森川慎也が父の番号を着信拒否に設定したからだ。

父を着信拒否した後、森川慎也は病室に向かった。彼は意識を取り戻した桜井玲奈の手を握り、優しく語りかけた。

「目が覚めてくれて本当に良かったです。玲奈、僕はあなたのことを心配しています」

桜井玲奈は顔面蒼白で、力なくぐったりとしていた。

彼女が自ら階段から身を投じた、そのことを知っているのは私だけ。

大粒の涙を瞳に湛えながら、彼女は震える声で言った。

「慎也、私、階段から落ちた瞬間、本当に死ぬかと思います」

「幸い、あなたがすぐに病院に連れて行って手術をしてくれたので助かりました。もしあなたがいなかったら、どうなっていたか分かりません」

桜井玲奈は軽く鼻をすすりながら、愛情たっぷりの瞳で森川慎也を見つめた。

「慎也、今日から私の命はあなたのものです」

森川慎也はその言葉を優しく受け止め、ふっと微笑んだ。

彼はポケットから輝く純金のブレスレットを取り出すと、桜井玲奈の手首にそっとつけた。

「これは玲奈へのプレゼントです。少しでも気持ちが和らいでくれたら嬉しいです」

「気持ちを安らかにしていることが、元気を取り戻す一番の薬ですよ」

その金のブレスレットは、とても丁寧に作られていた。かつて私が一番欲しかった憧れのものだ。誕生日の時に、どうしても欲しくて彼に頼んでみたけれど、冷たく断られた。でも今、そのブレスレットは桜井玲奈の手首に飾られていたなんて。

桜井玲奈はそのブレスレットにそっと指を這わせながら、満足そうな笑みを浮かべた。

「慎也、本当にあなたって私にこんなに優しくしてくれます」

しかし、彼女はすぐに口を尖らせて、不安そうに言った。

「森川さんがこんなに優しくしてくださったら、松下さんは怒りませんか?」

私の名前を聞いた途端、森川慎也の表情が一気に険しくなった。

「その女のことはもう忘れてください!あの女さえあなたを階段から突き落とさなければ、あなたがこんなに苦しむことはなかったのに!」

彼はそう言いながら、桜井玲奈の手を強く握り、怒りに満ちた声で続けた。

「心配しないでください、僕が必ずあいつに償わせます!」

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