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第11話

その朝は、風も穏やかで、陽射しも暖かかった。彼はゆっくりと振り向いて私の方を見つめ、ぽつりとこう呟いた。

「千代子、会いたい。本当に会いたい......」

その言葉が終わると同時に、森下慎也は窓から飛び降りた。

十二階からの高さ、一瞬で全てが終わった。

警察が到着した時、彼らが見つけたのは、血に染まり、無残に変わり果てた彼の姿だけだった。

私の父は、ようやくほんの少しの慰めを得ることができた。

しかし、この悲劇は、もともと深い悲しみに暮れていた森下のご両親に、さらに大きな打撃を与えた。

遺体安置所で二人があまりにも悲痛に泣き崩れる姿を見て、私はただ無力に頭を下げることしかできなかった。

「叔父さん、叔母さん、来世では、またあなたたちの嫁にしてもらって、ちゃんと親孝行します」
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