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第231話

「何が『夕子』よ?私は春奈だわ、夕子じゃないの!罪を犯したからって、人違いなんてくだらない言い訳で逃れようとしないで!」

和泉夕子は彼の手を振り払うと、一歩後ろに下がり、携帯をしっかり握りしめ、腕を組み、顎を上げて彼を睨みつけた。

その表情は非常に威圧的で、話し方も横柄で、かつての温順で控えめだった彼女とは全く異なっていた。

だが、その顔立ちは骨の髄に刻まれているように、あの頃の彼女そのものだった。ただ、大人っぽく派手なメイクを施しているだけだ。

霜村冷司の整った顔立ちには、信じられないという表情が浮かんでいた。これは間違いなく、彼の和泉夕子なのだ。

彼は手を伸ばし、彼女の顔に触れようとした。

だが、彼女は少し首を後ろに引き、その手を避けた。

「ちょっと、もしまた変なことをしたら、大声で人を呼びますからね!」

霜村は少し目を伏せ、赤い目をして彼女を見つめた。

「君は僕を恨んでいるのか?」

その声は、何とも言えない無力感と、消えない悲哀を帯びていた。

和泉はまばたきをし、視線は冷ややかで、彼を見つめるその瞳には一切の感情が宿っていなかった。

「あなたが何を言っているのか、さっぱりわからないわ」

そう言いながら、彼女は腫れた唇を手で軽く触れ、不機嫌そうに霜村冷司を睨んだ。

「まあいいわ、狂犬に噛まれたと思っておく」

彼女はそう吐き捨てると、さっさと背を向け、車のドアを開けた。

しかし、その瞬間、長い指がドアを「バタン」と閉めてしまった。

そして、彼女が抵抗する間もなく、彼は彼女を抱き上げ、お姫様抱っこの体勢でしっかりと腕の中に閉じ込めた。

「頭おかしい!早く放して!助けて!」

和泉は全身を震わせ、必死に抵抗したが、彼の力は驚くほど強く、彼女の腰をしっかりと支え、身動きが取れないようにしてしまった。

彼女は抵抗できず、怒りに任せて彼の肩を噛んだ。しかし彼は痛みを感じる素振りも見せず、そのまま彼女を抱え、スポーツカーに向かった。

片手で助手席のドアを開け、彼女を無理やり座らせると、すぐにロックをかけ、彼女が逃げ出せないようにした。

和泉は拳を握りしめ、運転席側から回り込んできた霜村を睨んだ。彼がドアを開けて乗り込むと同時に、彼女はその隙に逃げようとした。

だが彼の動きは彼女よりも早く、素早く座席に収まり、再びロックをかけた。狭い
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