第5話

私は顔を背け、涙をぬぐった。

松井湊を追い払おうとしたとき、遠くで木村北斗の冷たい声が響いた。

「佐藤明穂、佐藤おばさんは一体どうやって亡くなったんだ？」

松井湊は瞬時に顔色が変わった。

彼が木村北斗と議論をしようとしたその時、私は声を低くして言った。

「松井湊、今日は母の葬式。すぐにここを離れて、しないなら通報する」

「脅迫してるのか？佐藤明穂、あなたは僕の妻だろう！」

「もうすぐそうじゃなくなるわ。松井湊、母はあなたによくしてくれたんだよね。彼女のためにも、あなたの恋人を連れてさっさと帰りなさい。彼女にあなたがここで仮面をかぶっているのを見せたくないの」

「それより、坂本美世と一緒に来た理由は何なの？」 松井湊は入口に立つ坂本美世を一瞥し、少し気まずい顔をした。

「明日、ちゃんと話そう」 そう言って、彼は逃げ去った。

木村北斗は彼を、まるで泥沼の中のゴミを見るように見つめていた。

木村おばさんと彼はとても賢い人だが、私の私事には深入りしないことを知っていた。

帰る時、木村おばさんは私に、助けが必要なら木村北斗に連絡するように言った。

私は笑顔で感謝した。

母が亡くなった後に、温もりをもたらしてくれるのは、何年も会っていなかった古い友人だとは思わなかった。

私は唇を噛み、涙をこらえた。

木村北斗は私の携帯を取り、彼自身に電話をかけた。

「何かあれば俺に連絡して、無理をするな」 私は下唇を噛みながら頷いた。

沈阿姨の車が遠ざかるのを見送ると、霊堂は特に広くて静かに感じられた。

この時、私は母が完全に私から去ってしまったことを実感した。

私は霊堂でひざまずき、大声で泣いた。

声が出なくなるまで、心臓が生理的に痛むまで泣いた。

翌日、私は服も着替えずに松井湊に会いに行った。

彼は一瞬驚いた。「佐藤明穂、わざとそんな格好をしてきたのか？」

「喪に服さなきゃならないって知らないの？」 彼は眉をひそめた。

「今の時代に、喪に服するなんて、そんなことはないだろう。わざと僕を困らせるためにこう来たんだろ」 松井湊は彼の病院近くのカフェで会うことを提案した。

彼のほとんどの同僚がここでコーヒーを飲んでいる。

彼は周囲に知り合いがいないかどうか注意し始めた。

「松井湊、どうして離婚しないの？」 彼は