第6話

私はカフェをどうやって出たのか全く覚えていない。

松井湊は副院長の評価を受けなければならないと言っていた。だから、この時点で問題を起こしてはいけないと。

彼は母が亡くなったことで、私には彼しか親しい人がいないと言い、離れたらどんな利益があるのか考えるように言った。

ネット上では、女性は男性と一緒に成長してはいけないと教えられている。

けれども、誰もが自分の目が間違っていないと思っている。

そして、誰もがそのような言葉を言う自信を持っているのは、正しい相手を選べなかったからだと。

実際、そういう人々は皆、現実を突きつけられる。

もちろん、私もその一人だ。

いつの間にか、松井湊の心構えは大きく変わってしまった。

彼がかつて大切にしていた医者としての慈悲と公平、正義はすっかり消えてしまった。

彼の目には、権力と欲望だけが残っている。

私たちは交渉できない。

こういう人とは、私はもはやコミュニケーションを取れなくなっていた。

私は弁護士に離婚訴訟を提出してもらった。

一週間後、私たちは法廷で再会した。

しかし、私が提供した証拠が不十分で、松井湊の不貞や無断での腎臓の移植を証明できなかった。

法廷は私の離婚請求を却下した。

弁護士によれば、離婚訴訟は初回の法廷では通常離婚を判決しないとのこと。

六ヶ月後に再度上訴すればよい。

六ヶ月、私は待つことができる。

法廷を出ると、松井湊は依然として傲慢だった。「佐藤明穂、この世には僕以外にあなたの親しい人はいない。離婚するつもりか？」

刺すような言葉は、最も近しい人間にしかわからないものだ。

松井湊は私が家庭の温もりを恋しがっていることを知っていた。私は避難所を必要としていた。

だから、たとえ法廷で再会したとしても、彼はこのことを真剣に考えてはいなかった。

私が今していることは、ただ悲しみの感情のもとにある我儘な駄々をこねているだけだ。

私は本当に彼と話すことができなかった。

彼が私の反応を見て、私の前に立ちはだかり、車で送ると強く言った。

「佐藤明穂」

私が松井湊を振り払おうとしたその時、一台の車が路肩に停まった。

木村北斗が窓を下ろして私の名前を呼んだ。

彼は眉を上げ、車に乗るように合図した。

松井湊が呆然としている隙に、私は走って木村北斗の助手席に座った。

車は走り