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第5話

辰也と藍井の結婚式はすぐにやってきた。

辰也は私の死亡証明を出さず、重婚のリスクを冒して藍井と結婚した。

幸い、私たちの結婚は公にされていなかったので、参列者の多くは辰也がすでに結婚していたことを知らなかった。

しかし、世間に秘密など存在しない。

誰かが辰也のそばを通りながらつぶやいた。

「北川さんって、もう結婚してなかったっけ?」

これが私の存在を知った最初の人だった。

辰也はそれを聞いて、怒るどころか、その人を主賓席に座らせた。

愛情が深い……いや、ただの自己満足だった。

私はすでに死んでいて、そんな扱いなど必要なかった。

辰也が藍井に用意した結婚式は盛大で目を引いた。

ガーデニアの花が庭園全体に敷き詰められていて、藍井は辰也に甘えるように寄り添った。

「私は愛されているわ。杏子さんと結婚した時も、こんな待遇はなかったのに」

辰也の目には何の感情もなく、藍井の手を握りながら答えた。

「もちろんだよ。彼女なんか藍井と比べ物にならない」

藍井はさらに嬉しそうに辰也の胸に飛び込んだ。

「でも、このガーデニア、あまり好きじゃないの。私、バラが好きなの」

藍井がガーデニアを好きではないのは当然だった。

ガーデニアが好きだったのは私だ。

かつて私は藍井の代わりだった。

今度は藍井が私の代わりになっていた。

私たちはどちらも辰也の前では同じだ。彼が愛していたのは自分自身だけだった。

ちょうどその時、結婚式のスクリーンに映像が映し出された。

そこから藍井の幼い頃の声が流れてきた。

「夏目の顔がどうにも気に入らなかった。何であいつが私より美人なんだよ」

「だから、あいつに嘘ついて、私のクリニックで美白ケアしようって誘ったんだけど、実は整形手術だったの」

「結局あの子、受け入れられなくて死んだの。彼女が弱いから死んだのに、何で私のクリニックまで潰されなきゃいけないの?」

ビデオが続くにつれ、藍井の顔色はどんどん悪くなっていった。

藍井のクリニックでは、かつて医療事故が起きていた。

そのせいで彼女は留学せざるを得なくなった。

夏目はその事故の犠牲者であり、夏目グループの令嬢だった。

今、その夏目の父親が藍井の方に向かって歩いてきていた。

一方、辰也はまるで関係ないように言った。

「早くビデオを止めろ。これを流したのは誰
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