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第8話

辰也はまるで免罪符を得たかのように話し始めた。

「杏子、俺が間違っていたとしても、前世のことを考えて許してくれないか」

「俺は本当に杏子を愛してるんだ。絶対に大切にするから」

だが、その深い感情に水を差すように、霊媒師が口を挟んだ。

「このお嬢さんの首にある赤アザは、前世でお主が亡くなるときに彼女を縛りつけた証拠でしょう」

「お主は彼女を束縛していた。前世でも、そして今世でも同じことをしている」

つまり、前世でも辰也は今と同じように私の前で涙を流し、哀願し、もう一度チャンスをくれと求めていた。

私はそのとき頷いたが、彼は結局、今回と同じようなことを繰り返していた。

辰也の顔は灰色に変わり、目を伏せた。

「何故だ?何故俺は大事にしなかった?」

私は冷たく笑った。

「その質問は自分にしなさい。早く私を解放してよ」

辰也は哀願するように言った。

「もし解放したら、杏子は俺を許してくれるのか?」

私は即答した。

「許さないわ。絶対に許さない。これ以上、私に嫌われることはもうしないで」

私の断固たる態度に、辰也は苦笑した。

「そうか。じゃあ、杏子を解放するよ」

その瞬間、私の身体は徐々に薄れていき、周囲との繋がりが弱まっていくのを感じた。

もうすぐ、ここから離れられる。

辰也は焦って叫んだ。

「杏子!」

「俺の誕生日に、少しだけでも会いに来てくれないか?」

「お願いだ、杏子の顔が恋しくて」

「こんな姿でもいいから、少しでもいいから、また会いたいんだ」

しかし、彼に返事をする者はいなかった。

辰也は空を掴むように、何もない場所に手を伸ばす。

私はたとえ彼の言葉を聞いても、断固として「無理だよ」と拒否するだろう。

私は安らかに三途の川へとやって来た。

久しぶりに両親に再会できた。

母は父の胸に寄りかかり、笑顔で私に手を振っていた。

「早くおいで、杏子」

見てごらん、私はいつだって愛されていたんだ。

道は険しかったけれど、私は全力で駆け抜けてきた。

何度も転んだけれど、母は少し叱るふりをしながら私を見守っていた。

「気をつけなさい」

その時、後ろから声が響いた。

「杏子!」

それは辰也だった。彼の顔は血だらけだった。

「これからも一緒に居ようね」

私は冷たく言い放った。

「いらないわ」

その頃、藍井
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