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第3話

「直人、久しぶり」

5、

高校時代、私は直人と3年間ずっと同じ机を並べていた。

今でも覚えているのは、直人が文系を選んだ時、担任の先生が彼の理系での優れた成績を見て、とても不思議そうにしていたことだ。彼は私を一瞥して「物語を撮りたいんだ」と言ったが、私は何も言えなかった。

あの頃の私は、自信がなく、青春の中で一番溢れるべき夢さえも口にできなかったのだ。

その後、直人は私が書いた物語の原稿を持って、私の代わりにコンテストに参加した。彼は受賞した証書を私の前に広げ、「真波」と書かれた名前を指差しながら言った。

「怖がる必要はないよ、真波。ほら、お前は本当に優秀なんだよ」

あの頃、太陽の光が優しく降り注ぐ中、彼はいつも私の方に向かってうつ伏せで寝るのが好きだった。ある日、私がプロットを書いていると、彼は目を細めてこう呟いた。

「将来、お前が脚本を書いて、俺がそれを撮るんだ。俺たちはずっと一緒だ」

あの頃の私はまだ若く、将来のことに大きな期待を抱いていた。私も、あれが私たちの未来になると思っていた。

大学入試が終わった日、大雨が降っていた。試験会場から出ると、直人が傘を差して待っていた。傘の外で大雨に打たれながら、受験生たちは歓声を上げていた。私は彼の肩を軽く叩いて言った。

「直人、私たちも遊びに行こう?」

彼はさらに私に近づき、持っていた傘をほとんど全て私の方に向けた。

「ダメだ、もうすぐ生理になるんだから、風邪を引いたら大変になるんだよ」

私は顔が熱くなり、行き交う同級生たちを見ながら、胸が少し痛んだ。

「直人、卒業したらもう毎日のように会えなくなるね」

彼は雨の中を見つめて、軽く笑った。

「ただの卒業だよ、別れるわけじゃないぞ」

雨音が大きくて、私が聞き間違えたんじゃないかと思い、もう一度確認しようとした。

「今、何て言ったの?」

「聞こえなかったならいいよ」

直人は少し顎を上げて、ツンとした態度を取った。結局、私たちが別れるまで、彼はその言葉をもう一度言うことはなかった。

6、

康之は私にワイングラスを手渡し、口を向けて促した。

「旧友と再会したんだ、早く一杯を注ぎに行けよ」

それを聞いた瞬間、直人のいつも冷静できれいな目元には、一瞬陰鬱な光が走った。彼は私のグラスに手を置いて制止した。

「いいんです。彼女は女性なので、無理に飲ませるのはよくないです」

私は目が熱くなるのを感じながら、グラスをしっかりと握り直した。

「大丈夫、今ならお酒が飲めるから」

彼は少し驚いた様子で微笑み、ウェイターから差し出されたグラスを持ち上げた。

「うん、もう大人になったんだな」

康之が私の腰に回した腕がさらに強くなり、彼は私を見下ろした。その目には嘲りと嫌悪がはっきりと浮かんでいた。

「桐生さん」

彼は笑いながら、私に軽く口づけした。

「僕たちはこれから楽しいことがあるんだ、先に失礼するよ」

康之の言葉はあまりにも曖昧で、私の顔は真っ青になった。

直人は彼の腕をしっかりと掴んだ。

手の甲には筋が浮き出て、彼がどれほど怒っているかが明らかだった。

しかし、彼が私に顔を向けたとき、その声は驚くほど穏やかだった。

「真波は彼と一緒に行きたいのか?」

康之は気にも留めずに笑い、選択肢を私に委ねた。

「奥さん、どうする?僕と一緒に来る?」

私は全身が震え、指先が自分の肌に食い込むのを感じた。

直人が再び声をかけるまで、私は現実に戻ることができなかった。

彼の顔を見る勇気もなく、私は小さな声で言った。

「直人、私たちは先に帰るよ」

言葉が出た瞬間、私は一刻も早くその場を離れたくて、康之の腕にすがって去っていった。

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