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第2話

シルクの滑らかな感触の次に現れたのは、引き締まった筋肉のラインだった。

最後のボタンを外そうとした瞬間、康之が私の手を掴んだ。

彼は無表情だったが、動きはあまりにも荒々しかった。

「真波、今自分が何をしているのか、分かっているのか?」

私はうなずき、顔を上げて彼を見た。

「おじさんは私たちがいい夫婦になって、子供を作ることを望んでいるのよ」

康之は私の手を少しずつ剥がしていった。

彼は微笑んだが、その目には冷たい氷のような光が宿っていた。

「君も君の母親と同じく下劣だな」

「まあ、それもそうだ。道徳の欠片もない人間から生まれたものが、良いものになれるはずがない」

彼は私を突き飛ばし、テーブルに置かれた水の入ったコップを私に投げつけた。

ガラスの破片が床一面に散らばった。

私は力が抜けてよろめき、後ろのテーブルに激しくぶつかった。

彼は私の指を足で踏みつけ、嫌悪感を露わにしながら私を見下ろした。

「子供を産んだからって罪を償ったことになると思うなよ。それと、それで僕から逃げられると思うな」

「真波、誰も君のことを愛せない」

「犬のように、僕のそばで使われ続けるべきなんだ」

4、

康之のシャツはゆるく、ほとんどのボタンが外れていた。

その下には、長年のトレーニングで鍛えられたきれいな筋肉が見えた。

私は一瞥し、すぐに目を逸らした。

新婚初夜の不愉快な出来事以来、彼とは一度も裸の付き合いをしたことがなかった。

彼は私に触れることを嫌いなって、周りにはいつも女性たちが囲んでいた。

そのため、滝森おじさんが子供を作るという夢も実現することはできなかった。

「真波」

康之が低い声で私の名前を呼んだ。

それは珍しく、穏やかな口調だった。

私は顔を上げた。彼は私を見つめ、その瞳には隠しきれない嘲笑うの色があった。

「君も試してみたらどうだ?」

「若くて活力がある人間は、到底違うものだよ」

私は微笑んで、そのまま振り返って歩き出した。

彼がこんなことを言うのは、ただ私を辱めるためだと分かっていたからだ。

もし本当に試したら、彼はきっと狂ったように怒るだろう。

「真波」

康之が背後から突然私を呼び止めた。

私は振り返り、彼を疑わしげに見つめた。

彼は私に向かって携帯を掲げ、画面のメッセージを見るように示した。

「今夜、パーティーがある。ちゃんとした服を着てくれ」

……

私は疑問を抱いた。これまでどのようなパーティーでも、康之は私を連れて行くことはなかった。

結婚してから、彼は公の場で私と一緒にいることを嫌がっていた。

だが今回は——

彼と共にホテルのロビーに足を踏み入れた時、私は彼がこの集まりに私を連れて来た理由を分かった。

私は彼の腕にしがみつき、視線を遠くの見覚えのある姿に落とした。

その瞬間、私はその場に立ちすくみ、足に重さを感じた。

桐生直人……彼が戻ってきたなんて。

康之は私の硬直に気づき、耳元で低くささやいた。

「どう?昔の男に会えて、感動した?」

彼は目を上げ、私の視線の先に目をやった。

二つの視線が空中で交わった。

康之は一切目をそらさず、口元には笑みを浮かべていた。

彼はワイングラスを手に取り、ゆっくりと直人の方に歩いて行った。

「桐生さん、お噂はかねがね」

彼は私にからかうような視線を一瞬送り、そして直人に向かってグラスを掲げた。

「聞いたところによると、桐生さんは真波の昔の同級生だそうですね」

「真波と僕の結婚式に来られなかったのは、とても残念です」

直人は彼を一瞥し、ゆっくりと私に視線を定めた。

「久しぶりだな、真波」

私は深く息を吸い、再び口を開いた時、声はかすれていた。

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