共有

第4話

7、

康之は怒りに満ちて私を車の中に放り込み、私は反射的に逃げ出そうとした。

しかし、手首は彼に強く掴まれてしまった。

次の瞬間、両手を押さえつけられ、後部座席に押し倒された。

「何から逃げようとしてるんだ?」

康之は頬を噛み締め、笑いながら低い声で言った。

「どうした?昔の恋人に会っただけで、もう気が逸れたのか?」

私は彼の狂ったような様子を見て、必死に抵抗した。

「康之、落ち着いて、こんなことをしないで」

「今更?もう一緒に寝ただろう?」

「聖人気取りはもうやめなよ。それとも直人に見せるつもりか?」

康之は私の顎を掴み、無理やり目を合わせさせた。

彼の力が強すぎて、私は痛みで涙が溢れた。

「真波、思い出させてやろうか?君がどれほど汚れているかを」

頭の中が一瞬で真っ白になった。

まるで、7年前のあの恐ろしい夜に戻ったかのようだった。

あの日は私の18歳の誕生日で、直人と一緒に海沿いでサイクリングする約束をしていた。彼の耳が赤くなっていて、何か特別なサプライズがあるんだろうと感じていた。

でも、人生はありふれた映画のようなもの。いつ、どこで物語が急転するか分からない。

その日、私は大切にしていたドレスを着て、少しだけリップを塗った。

家を出ようとした瞬間、疲れ果てた様子の康之と鉢合わせた。彼は血走った目で私を睨み、一気に私を家の中に引き戻した。

そして、狂ったように私の服を引き裂いた。

あの時の光景は今でも思い出したくない。ただ、ベッドの上で縮こまっていた私を覚えている。彼はスマホで何度も写真を撮り、私の髪を掴んで無理やり目を開かせた。

「好きだろ?一緒にいたいと思っているだろ」

「僕の許しもなく、誰を好きになる権利が君にないはずだ。何様のつもり?」

「答えろよ、真波!誰がいいと言った!」

私は空虚な目で彼を見つめていた。

人間は極度の痛みを感じると、涙も流せなくなることを、その時初めて知った。

最後に、彼は私を解放し、笑顔を消して冷たく見下ろして言った。

「僕の可愛い妹、逃げるなんてもう考えるなよ。幸せになることもこの僕が許さないから」

「君は僕のそばに居続けるしかないんだ、罪を償うためにな」

「この写真が彼に見られるのも嫌だろう?」

「きっと汚いと思うぞ」

直人は私をそんな目で見るはずがない。

ロックされた本
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status