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十年の恋が無に帰す
十年の恋が無に帰す
著者: サクサイ

第1話

これが初めて、私は実際に夫の見南の友人が話していた、あの可愛く柔らかい雰囲気のクラスのマドンナ、夏悠を目にした瞬間だった。

彼女の顔はほっそりしていて、手首には包帯が巻かれていたが、それでも彼女の持つ独特な雰囲気を少しも損なうことはなかった。

まるで嵐の中で傷つけられながらも、なお清らかに咲き誇る蓮の花のように、高潔で独立した佇まいだった。

彼女のことは以前、見南の大学卒業写真で見かけたことがある。

そ の写真で、彼女は見南の隣にぴったり寄り添い、彼の顔に向けて少し恥じらいを見せるように微笑んでいた。

私は見南に、冗談めかして「もしかして彼女に恋しているの?」と聞いたことがある。

でもその時、彼は私の手をしっかり握り、片膝をついた、

「愛しているのは君だけだ」と誓った。

でも今、私は左手の薬指に輝く結婚指輪を触りながら、心の中に酸っぱく苦しい感情が込み上げるのを感じていた。その後、すぐに激しい吐き気が襲ってきた。

二人が玄関に立っているのも気に留めず、私はトイレに駆け込み、思い切り吐き出した。

やっとのことで顔を上げ、鏡の中に映る、つわりのせいで赤くなった目と黄色くくすんだ自分の顔を見た時、その背後には顔色の悪い見南の姿があった。

彼は眉間を軽く揉みながら、ゆっくりと口を開いたが、その口調は有無を言わせないものだった。

「悠ちゃんは最近体調が優れてないから、数日ここに泊めることにする」

私は返事をしなかった。ただ黙って洗面台に散らばった吐瀉物を流しにかけただけだ。

彼が夏悠と頻繫に会っていることは前から知っていた。

だが、まさか彼女を堂々と、私が心を込めてリフォームしたこの新居に連れてくるとは思わなかった。

……

1ヶ月前、親友の心愛が一枚の写真を私に送ってきた。

それは、夫の見南がある女性と一緒に凧揚げをしているところが映っていた。

その時、私はちょうど妊娠二ヶ月目だと知ったばかりで、テーブルには彼が出勤前に作ってくれた朝食が置かれていた。

私は彼をかばい、きっと仕事関係だとか、クライアントと一緒にいた時に、たまたま凧を飛ばせない少女に出くわしたのだろうと思っていた。

その時の私の頭の中では、彼のために千の言い訳を作り上げていた。

それは、当時の私は彼を信じていたからだ。

私を永遠に愛してくれると信じていた。

だが後に、助手席で自分のものではないリップや、開封されたプレゼントボックスを見た時も、私は自ら彼のために言い訳をしていた。

私は彼を愛していたから。十年間も愛していたから。

今になって、彼が夏悠を堂々と家に連れてきているのに、私はまだ心のどこかで幻想を抱いていた。

愛する人を信じることは、二人が一緒に人生を歩くでいくための秘訣だと信じていたからだ。

だが、胸の奥から伝わる痛みと、見南が夏悠に見つめる優しい眼差しが、私にこう告げている気がした。

「彼はもう、結婚式で交わした二人の永遠の誓いを忘れてしまったようだな」

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