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初恋のために仮死を選んだ夫を私が葬る
初恋のために仮死を選んだ夫を私が葬る
著者: 蒼いカワ

第1話

「小円が摘んだこの実、美味しそうだね」

前世と同じように、夫は私が摘んだ野生の実に興味を示し、それが私の悲劇の始まりだった。

前世でも、夫と山登りをしている最中に、私が摘んだ野生の実を夫がどうしても食べたがり、食べてすぐに中毒を起こして亡くなった。

その時は夜で、さらにスマホの電波も届かなかった。だから、夫の遺体を運び出すのを手伝ってくれる人は、一人もいなかった。

一人の「善い人」が現れ、夫の遺体を見ていてくれると言うので、私は一人で山を下り、夫の遺体を山に残していった。

しかし、救助隊を連れて戻った時には、夫の遺体がすでになくなった。そして、その「善い人」が夫を山から下ろしたと聞かされた。

急いで山を降りると、夫がすでにその「善い人」に火葬されたと言われ、私は悲しみで気を失いそうになった。

夫の遺骨を家に持ち帰ると、休む間もなく、知らない母子が家を訪ねてきた。

夫が生前、家も車もすべて彼女たちに譲り、さらに多額の借金をしていたと、その二人はそのように言った。

私は疑ったが、義母は「息子は生前、名誉を重んじていたから、必ず返済しなきゃ......」と泣きながら訴えた。

夫は確かに名誉を非常に重んじる人間で、誰かに悪口を言われると殴りかかるような性格を持った。

死んだ夫に対する罪悪感もあるから、彼の名誉を守りたかった。それで、今まで貯めてきたすべてのお金をその二人に渡し、家を追い出された。

しかし、重病の義母を治療するには莫大な医療費が必要なので、私は一日三つのバイトを掛け持ちして稼いだ。

義母にツバメの巣、アワビを買い、健康を回復させようとしたが、自分はお金を節約するためにご飯だけで済ませた。

十年が経ち、義母の病気は回復したが、私はついに体を壊した。

医者は、過労で病気になり、治療すれば助かるが、治療しなければ長くは生きられないように言ってくれた。

義母は私に泣きながら、「医療費に苦しんできたので、治療をやめてほしい」と懇願した。

私も義母に負担をかけたくないと思い、治療を断念することに同意した。

だが、私が死にかけている時、死んだはずの夫があの母子を連れて現れた。

夫は笑顔で、その女を「縁奈」、その子を「いい息子」と呼んだ。

その時になって、真相を知った。夫が野生の実による中毒で死んだのではなく、偽装死だった。

あの女は彼の初恋の人で、その子が私生児で、さらに、あの「善い人」もその女の弟だったのだ。

その全ては私を無一文にして追い出し、病気になる義母を介護させるための計画だったのだ。

でも、私はもう動けず、ただ目の前で夫が100円貨を投げてこう言うのを聞いていた。

「長い間、母の世話をありがとう」

その女は100円貨を見て不満げに言った。

「100円貨なんて何よ、50円貨で十分でしょ。取り戻して!」

彼女は100円貨を取り戻し、50円貨を私の顔に投げつけた。

こうして、私は死んでも死に切れなかったが、彼らは栄華を極めて過ごしてきた。

それゆえに、今世では、前世の悲劇を絶対に繰り返させない。

夫が偽装死を望むなら、私は彼を本当に死なせる。

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