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出産の最中、偽令嬢に愛人の汚名を着せられた
出産の最中、偽令嬢に愛人の汚名を着せられた
Author: 今宵で一攫千金しやす

第1話

「この卑き愛人めを産褥から降ろせ!あんな腐れ女にテツヤくんの子を産む資格なんてないわよ」

私は衰弱の体をなんとかして支えて、産褥に座らせた。不安に満ちた表情で、私の居た方向に向かって来ていた女たちを見ていた私は、陣痛を規則よく感じていたため、思わず自分の腹を手で庇いながら、震えた声で言った。

「どちら様でしょうか。どうやってこの産屋に入ったんですか。私の主治医の先生は?」

一番に前に来た女性は、私の頬を引っ叩いた。後ろの二人の女は、効率よく役を分担して、その一人前からは私を引っ張り、もう一人は後ろで私の背中を押した。強引に私を産褥から引き落とした。

産褥から落ちた瞬間、私が両腕を回してしっかりと腹を抱えた姿勢を取ったため、私は床で後頭部を強く打った。

頭が床とぶつけ合ったその一瞬は、私の間の前が何も見えなくなって、無性に吐き気がした。

胃から走ってきた虫酸を吐き出すのも間に合えず、私は猛烈な陣痛で力を失い、窄まった。

私は視線を上に向けて、目の前にいたその女性を見て、哀願そのものの声をあげた。

「もうすぐ赤ちゃんが生まれますので、どうかお医者を、お願いします」

その女性は凶悪な目つきで私を睨んだ。しゃがみ込んだ彼女は、咄嗟に私の髪を引っ張った。

「愛人めが、子供が生まれればテツヤくんの妻になれる算段か」

「正直なことを教えてあげようか。財力や権威をもつ一名門のご令嬢様の恨みを買うリスクを背負って、あんたなんかの分娩に手伝うような愚かな医者など、どこにもないわ。あんたの腹の中のクソガキが今日で死ぬのだ」

財力や権威をもつ一名門のご令嬢だと?

頭を上げさせられた私は、自分とよく似ている横顔をしているその女を見ながら、にやついた。

彼女の言う財力や権威をもつ一名門の当主の唯一の娘として、私は八歳の時誘拐され、危うく命を落とすところだった。

悪党から救われてから、私はまる一年家で休息して、やっと歩けるようなったのだ。

私を守り、二度とあんな目に遭わせないように、両親は私に関する情報の一切を封じた。ネットから私の写真を全部削除してもらっただけではなく、私と顔立ちのよく似た影武者まで用意して、世の中を撹乱させた。

二年足らずの間で、上流階層では、私と血の繋がりのある親戚を除いて、私の顔を知るものはほとんどなくなった。

更なる安全を求めて、両親は一層のことに、私を海外留学に行かせた。

私が海外で勉学に励んでいたその数年間、両親は私の名を借りた偽物の山に対しては、目を瞑る態度を取った。私の名を借りて、悪事を働かない限り、両親は一切不問だった。

しかし、両親の放任を盾に、この者たちがここまで猛ったとは予想外だった。ましてや、外の用心棒を簡単に抜けたなんて、思わなかった。

私はきつく彼女を睨み、手を伸ばして彼女の手を掴んで、力強くしたのほうへ引っ張ったのだ。

「一名門のご令嬢に装って、こんな悪事を働いたら、罰が当たってしまいますよ」

私の言葉を耳にした突端に、血相を変えた彼女は、もう片方の腕をあげて、再び私を引っ叩いた。

「装うだと?」

彼女はバッグからスマホを取り出して、私の顔面に当てた。

「よく見たまえ。これはわたしの一名門当主のパパと婚約者だ」

「テツヤくんに抱かれたとしても、彼にはあんたを嫁にもらう気なんてさらさらないんだよ。一名門の令嬢と愛人、どっちを選ぶか。答えは見え見えでしょう」

私は固まったまま、その写真を見つめていた。

彼女が何回も口にしていたテツヤくんと言うのは、私の婚約者の市川徹也だったが、彼を両親に紹介したことなんて一度もなかった。

これど、今の技術は発展していて、写真の改竄や偽造なんて容易い。写真一枚で、自分が徹也と共に歩んできた八年や私たちの間での愛情を疑うわけにはいけなかったのだ。

私は手足を動かして、その女性からスマホを奪い取ろうとした。

「徹也と会わせてください」

彼女はスマホをバッグにしまって、獰悪な目つきで他の女たちを見た。

「この愛人めの有り様をストリーミングして、世界中の人々と愛人の結末を見届けるのだ」

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