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第5話

声を詰まらせた父は目を赤くして私を見ながら、手を伸ばして翼翼な動作で、私の頭を撫でてくれた。

「歳安、辛い思いをさせてごめんね」

父の言葉を聞いて、私の気持ちはもう抑えられなくなった。父の懐に飛び込んだ私は、大泣きだして、詰まった胸の内を発散するように父の腕を掴んで、たまった悔しさを一気に振り払おうとした。

父は心を抉られたようで、悲しみを押し殺しながら私の背中を撫でていた。

「もう大丈夫よ。お父さんがここにいるから。我が大切な娘に辛い思いさせた輩には対等する対価を支払ってもらう」

私の泣き声があまりにも大きひく悲惨だったので、産屋にいた偽令嬢も手下の愛人退治屋の女たちも外に出ていった。

父は背中だけをその偽令嬢に見せたため、彼女は父の顔を見れなかった。

涙に濡れた私の顔を見て、彼女は鼻で笑った。

「おや、卑き愛人には安っぽい親父がいるのね」

「あんたのような人の恋に割り込むような愛人めなぞ、育てる親のいない躾のないゴミだと思っていた」

父は怒りで拳を握りしめて、振り向こうとしたが、私は父の腕を掴んで止めた。

皺を眉間に寄せて私を見つめていた父には、私は返事代わりに頭を軽く左右に振った。そして、私は目の端に映った側に固まってしまった徹也に気を配った。

状況から見て、彼は父に面識があるのは事実だ。

今頃の彼の内心は、どれだけの絶望と悔しさに食らわれているか。

やっと自分のこれから五十年を踏ん張らずとも余裕で贅沢にくらせていける女神に恵まれたらと思えば、なんと相手は偽物だとは衝撃だとも思うが、彼には、まさか振られたばっかりの私こそが正真正銘の一名門令嬢だとは、到底思いもしないでしょう......

私は淡々とした態度で偽令嬢を見た。

「仮に私が愛人だとしても、それはあくまでも人間としての徳だけの問題。それを引き換えに、貴女は私の子を殺めたその張本人だ」

「人殺しにとやかく言われる筋合いなどない」

その話を聞いて、父の体は少し強張った。父は手を震えながら、私が抱いていた子を触れてみた。そしてしゃがれて潤んだ声で私の名を呼んだ。

「歳安......」

気を取り戻した徹也は、大股で偽令嬢のいた方向へ歩いて行った。眉を顰めていた彼は、偽令嬢の頬を引っ叩いた。あくまでも悲憤していたかのように吼えた。

「悪女め、よくも僕の許嫁と、生まれたばか
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