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第4話

市川徹也だ。

私は頭をあげて、眉を顰めた彼と視線を合わせた。私を一眼見て、彼は嫌悪の表情で目をそらした。

「上白石歳安、一体何をどうしたら自分をこんな無様にさせることが’できたんだ?」

「遠の昔に言ったはずだ。もう僕の生活の邪魔をするなって、どうしてまた粘ってくるような真似を」

「僕の子供を産んでいれば、僕はお前と結婚するとでも思ったか。夢を見るのもここまでだ。僕が愛しているのは上白石潮だけ」

徹也を見ていて、私の心は引き裂かれたように痛んだ。

私が産屋にその偽令嬢とその手下に囲まれ、閉じこれたのは、徹也が裏切ったからと言うことは既に悟ったのだ。

しかし、いざ彼の口から彼ははその偽令嬢の機嫌を取るために、私と一線を置くと聞いて、私は痛むのだ。

私たちは八年も愛し合っていたのだ。

異邦での助け合いから、彼の帰国起業に付き合い、共に困難を乗りこれるまで、一番どん底の時期にでも、私たちは相手を手放すことなんて考え一度も生じなかった。

今彼の会社も、父の陰での加勢入れで、上場に成功した。彼のキャリアもこれからだんだんよくなっていくでしょう。

私は子供の出産後、彼に自分の正体を打ち明けるつもりだった。まさか、彼の本性がそこまでせっかちで、八年の感情を裏切ってまで、偽物にまんまんと騙されるような愚か者だとは、予想しなかった。

私は頭を上げて、じっと徹也のことを見つめた。自分の抱いていた子供を彼の前に差し出してから、せめて、彼の中にあった父としてのこともへの慈愛を少しでも蘇らせてもいいと思って、私は潤んだ声で言った。

「私たちの息子は死んだのだ。この悪女に殺されたのよ。男なら警察に通報して、私たちの息子の仇を打つのだ」

徹也は困った表情で気難しそうに、私の抱いた子を見た。口を開けたけど、彼は何も言えなかった。

彼の反応を見て、偽令嬢は親密そうに彼の手を組んだ。

「徹也くん、この女はただの恥知らずの愛人だよ。愛人の子供もろくな者じゃないの」

「パパからの投資欲しいでしょう。もし徹也くんが外で隠し子なんてできたことをパパに知られたら、きっとあたしたちが一緒になることを認めてくれないのよ」

そう聞いて、徹也は諂った顔で偽令嬢を見ながら言った。

「僕が当初この女を抱いたのも、彼女に嵌めたからだ。死んだガキも、この女が手段を使ってできたのよ。生きたまま
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