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第8話

隼人は悔しそうな顔で私を見て、泣いた。

「母さん、私が悪かった。昔の私は母さんが家庭主婦だから、母さんのことを馬鹿にしてた。そのうえ、何も出来ない母さんがいることを恥っていた」

「この半年間で初めて、母さんがこの家のためにどれだけ尽くしたか初めて知った」

「母さんのいなかったその半年間、私と花緒は今までにないほど忙しかった。あの楢崎理央は全然親父のことを気にかけていないし、私たちのこともだ。八時や九時までに残業して、帰りが遅くなった時、親父のところで温かい飯でも食べに行こうとしたら、一人でインスタントラーメンで夕飯をなんとか誤魔化そうとした親父を見たの」

「お母さんにまめに世話をしてもらってきたから、ずっと女ならそうであるべきだと思い込んでいたのだ」

「母さんをひどく傷つけたのは私たち全員だ。いくら怒られても殴らようとも、孫を免じて親父と復縁してくれないか......」

そう言いながら、隼人は六歳の孫の歩を私の前に押し付けてきた。

私を見たら、歩は「わ」と泣き出して、私の懐に飛び込んできた。

「ばあば、帰ってきて、ばあば」

歩の泣き声を聞いていたら、私は悲しくなって、こぼしそうになった涙を我慢して、歩の頭を撫でてあげた。何かを言おうとしたら、栄子は私を側に引っ張って、自分の体で私のことを庇って、冷笑して隼人のことを見た。

「あの時、君が何を言ったのかは、全部お母さんから聞いたから。確か、自分のお母さんは楢崎とは比べものにならないって言ったかの」

「そんなにあの楢崎がいいのなら、文郁に助けなど求めないで頂戴」

「君たちのために、半生を捧げた彼女は、容易にあなたたちに捨てられたのだ。彼女の価値に気付いた今、全員揃って後悔しても、もう遅いのだ」

私を見つめていた栄子の顔は、怒りで真っ赤になっていた。

「もし、再びあの家に戻る真似などしたら、私はお前と縁を切るから」

私は少し力を入れて、栄子の手を握り返した。

「安心して、いくら私でもそこまで馬鹿じゃない。私はただ歩のことが可哀想で、気の毒に思っただけよ」

隼人を見て、私はため息をついた。

「親というものとは、一体どうあるべきかを他の人を見習え。希望を全部他人に託すのは筋ではない」

「今の展開になったのも、全部あなたたちの自業自得だ。お父さんと言ったら、隼人と言ったら、冷たい人間だ」

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