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第6話

著者: 今宵で成り上がり
last update 最終更新日: 2024-10-29 19:42:56
私は栄子と朝一のフライトに乗って東京へ行った。

浅草で雷門を仰いでいたら、涙がなんとなく頬の輪郭を沿って流れてきた。

若い頃、和樹が一回東京に出張しに来たことがあった。あれは私が妊ったばかりの時のことだった。私は和樹に、浅草で雷門を見に連れて行ってくれと頼み込んだ。

けど、彼は自分が仕事で来てるからと私を断ったのだ。

後ほど、帰ってきた彼は自分が雷門の前で立ち姿で撮った写真を見せてくれた。その時は、私は羨望の気持ちを抱いて、子供を産んだら私は絶対一回雷門を見に行くと思った。

子供が生まれてきて、私もあの家に囚われ、まるで疲れのしない独楽のように、生涯の大半を家に捧げた。

息子が結婚したその年、私は再び雷門を見に行きたいと言った。

でも、相変わらず誰も私の気持ちを気にしてくれなかったし、行かせたりもしなかった。

今私は一人ぼっちで浅草に来て、観光客のなみに混じって、雷門を眺めていた。

栄子は手をあげて私の涙を拭いてくれた。

「もう泣くなって。これからはこの親友の私が、世界中あっちこっち一緒に回ってあげるから」

「以前の文郁はお金に困ってて、いつも私の助けを頼りにしていたが、今の文郁は年を取ったのわりに、金持ちになってる。このような好機私は逃せたりはしないわよ」

栄子を抱き締めていた私は子供のように泣いた。

「うん......」

東京をでた私たちは、伊豆高原に行くために、静岡行きのフライトに乗った。

まるで水にでも洗ったような鮮やかな青さをしている空の下に立ち、私は花柄のスカーフを持ち上げて、カメラに向けて「チーズ」と叫んだ。

栄子は私のことをダサいと言ったそば、自分でポーズをして、真似させてくれた。

いつもと違う栄子を見て、私は肩が止まらなく震えるほど大笑いした。

私たちは和樹がこの一生最も嫌いな鰻までも食べに行った。実際に食べてみると、鰻が全然不味くないことに気付いた。口の中では、ふっくら柔らかい食感だった。

残念だったのは、私はもう年寄りなので、少ししか食べられなかったことだ。

もし時間を十年前まで巻き戻したら、私はきっと二杯か三杯までいけたのだ。

それから、私たちは共にメロンを食べに北海道に行き、湖を見に滋賀に行き、最後には京都の清水寺まで行った。

本堂の前で、信心深く手を合わせていた私は、お天様に健康を祈った。私はま
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    私は栄子と朝一のフライトに乗って東京へ行った。浅草で雷門を仰いでいたら、涙がなんとなく頬の輪郭を沿って流れてきた。若い頃、和樹が一回東京に出張しに来たことがあった。あれは私が妊ったばかりの時のことだった。私は和樹に、浅草で雷門を見に連れて行ってくれと頼み込んだ。けど、彼は自分が仕事で来てるからと私を断ったのだ。後ほど、帰ってきた彼は自分が雷門の前で立ち姿で撮った写真を見せてくれた。その時は、私は羨望の気持ちを抱いて、子供を産んだら私は絶対一回雷門を見に行くと思った。子供が生まれてきて、私もあの家に囚われ、まるで疲れのしない独楽のように、生涯の大半を家に捧げた。息子が結婚したその年、私は再び雷門を見に行きたいと言った。でも、相変わらず誰も私の気持ちを気にしてくれなかったし、行かせたりもしなかった。今私は一人ぼっちで浅草に来て、観光客のなみに混じって、雷門を眺めていた。栄子は手をあげて私の涙を拭いてくれた。「もう泣くなって。これからはこの親友の私が、世界中あっちこっち一緒に回ってあげるから」「以前の文郁はお金に困ってて、いつも私の助けを頼りにしていたが、今の文郁は年を取ったのわりに、金持ちになってる。このような好機私は逃せたりはしないわよ」栄子を抱き締めていた私は子供のように泣いた。「うん......」東京をでた私たちは、伊豆高原に行くために、静岡行きのフライトに乗った。まるで水にでも洗ったような鮮やかな青さをしている空の下に立ち、私は花柄のスカーフを持ち上げて、カメラに向けて「チーズ」と叫んだ。栄子は私のことをダサいと言ったそば、自分でポーズをして、真似させてくれた。いつもと違う栄子を見て、私は肩が止まらなく震えるほど大笑いした。私たちは和樹がこの一生最も嫌いな鰻までも食べに行った。実際に食べてみると、鰻が全然不味くないことに気付いた。口の中では、ふっくら柔らかい食感だった。残念だったのは、私はもう年寄りなので、少ししか食べられなかったことだ。もし時間を十年前まで巻き戻したら、私はきっと二杯か三杯までいけたのだ。それから、私たちは共にメロンを食べに北海道に行き、湖を見に滋賀に行き、最後には京都の清水寺まで行った。本堂の前で、信心深く手を合わせていた私は、お天様に健康を祈った。私はま

  • 六十歳になった私は自分を取り戻した   第5話

    和樹のほうは少しの緩みも見せなく、弁護士まで私のところに送り込んだ。彼は、全財産の半分と今私たちの住んでいる屋敷だけをくれることを承諾した。それ以外は、一歩も譲らなかった。私は頭を振って、その離婚協議書を弁護士の方に返した。「共有財産の何も持たずに家を出るか、地位も名誉も失うか、ご自由に選んでくれとあの人に伝えてください」話し合いが物別れに終わってから三日後、楢崎が訪ねてきた。彼女は、自分の恰幅をうまいことにアピールできた黒いドレス姿できた。どうやってここを知ったのかは分からないが、彼女が客人として来ている以上、私はここの主ではないけど、温かいお茶一杯でもてなしてあげた。行儀よくお世辞を交わした後、彼女は本題に入った。「和樹さんは文郁さんのせいで体調を崩しているの」それを聞いていると、私は目を伏して、手のひらに乗せていた湯呑みを強く握った。そして、私は頭をあげて彼女を見た。「和樹は体が弱いから、最近気温が下がってきたし、病気なのも無理がない」「財産の半分をあげても離婚してくれないとは、随分と欲張りだったこと」私は頷いた。「私があの人に三十五年間こき使われてきたその間、あなたはあの人に花や蝶やで、大事にしてもらっていた。多めに請求するのも妥当だと思うが、これは精神的苦痛に対する損害賠償だというのだ」楢崎は私の言い分で、怒りのあまりに笑ってしまった。彼女はバッグから、新しくできた離婚協議書を持ち出した。「これは私たちのできる最大限の譲りだ。文郁さんと離婚しても、和樹さんには生活がかかってるのよ」「ことがこうなってる以上、文郁さんと和樹が離婚しなと治らないから、もうこの辺にしましょう」私は新しいの離婚協議書をめくって、条款に目を通していた。元の条款のほか、養老のためのお金を増やしてくれた。私は躊躇しながら、楢崎のことを見つめた。このことは確かに大いに世間を騒がせいていた。私たちももう若くではないので、このことが長引いてしまったら三人仲良く笑い物になるだけだ。それに、私は和樹という人間の本性をよく知っている。楢崎が、彼のおねだりに耳を傾けていられるのもいまだけだ。私は目を伏して、離婚協議書の最後のページを指で指しながら言った。「ここで一つ加わって欲しいのだ。柏原隼人に、私の財産を継承する権利

  • 六十歳になった私は自分を取り戻した   第4話

    屋上の風当たりが強くて、立つのが精一杯だった。私の股は震えていて、心臓もドキドキしていた。実を言うと、私は臆病者だ。これまで生きてきた人生に、私は少しもずっこけたことをしなことはなかった。和樹の親戚との喧嘩は、記録上最もの偉業だった。けど、今日私は過去六十年分の勇気を全部出して、私は遣られっぱなしの弱みそではないことを、あの恩知らずの親子に知らせやるのだ。この数日、マスコミはかなり和樹の動きに気にかけているようで、先帰ってきたときには、すでに記者が待ち伏せていることに気付いた。私が屋上に登ったら、彼らは即席にカメラを持ち上げて、私に向けてシャッターを押し続けた。近所たちはそれを見て、信じられない顔をしながら、警察を呼んだ。’暫くして、警察も、消防士も駆けつけてきた。家のある建物の前では、野次馬の海ができていた。警察の方はスピーカーを持って、私に声をかけた。「奥さん、何か事情があるなら私ともが相談の乗りますので、どうか降りてください」包を持っていた私の手の震えが止まらなくて、その包は「不注意」で落ちてしまった。周りの人々が思わず息を呑んだのを聞こえた。空を舞い落ちる手紙を見て、私は震えていた両手を固く握りしめった。今度こそ、和樹と楢崎が本格的に、社会的な死を迎えたのだ。私は警察によって、屋上から救出された。私は女性警察官を抱きしめて、悔しさに満ちた嗄れたことで、泣きながら言った。「私たちが結婚してからもう三十五年だ。なのに、あの人は私を騙して、二十年もその女と不倫関係を続けてきたのよ......」「三十五年間、私は全てを尽くしてあの人の世話をしてきた。どうして、あの人は私の六十歳の誕生会の日に、私にそんな大恥をかかせたのだ」「それに息子からも、どうしてその女に妻の座を譲ってあげないと責められ、私はなんでこんなにも窮屈人生を」私は息ができなくなるまで何続けた。カメラのフラッシュで、私の目は少し痛くなった。突然なことに、怒りの込めた声が野次馬を抜けて聞こえてきた。「柏原和樹の人でないめ。よくもあなたを騙して二十年も不倫してきたな。聖人君子に見えて、大学の教授だったと言うのに、まさか裏の顔もあるとは」親友の東海林栄子は手紙を握りしめ、私を抱き締めなら親友思いの涙をこぼした。暫くして、彼女は涙

  • 六十歳になった私は自分を取り戻した   第3話

    再び目が覚めたら、私はもう病院にいた。私の目に映ったのは、隼人の暗い顔だった。私が目を覚ましたのを見て、隼人はいち早くスマホを私の前まで押し付けた。私は老眼で、スマホをこんな近くまで持って来られると、逆に何も見えなかった。目を細くして暫くスマホのスクリーンを見つめた後、私は無力に視線を上に向けて隼人のことを見た。「よく見えないから、何があったか、教えてくれ」すると隼人はため息をついた。「お袋はさ、いい歳して、どうしていつも面倒ばっかりを人にかけるのだ」「昨日はどうして一人でホテルを出たのだ!土砂降りだったというのに、どうして愛想笑いの一つや二つして、車を乗せてもらったりしないんのだ?」「人に世話してもらいたくなくとも、俺に電話くらいしろよ」「なのに、自分だけが可哀想にもったいぶりやがって、親父にとんだ迷惑なんだよ!」私は隼人の話で訳わからなくなり、頭を左右に振った。「これは一体どういう意味かしら」隼人は再びスマホを私の顔面までに押し付けてきた。「親父と楢崎おばさんはネットで、マスコミにバッシングされているのだ」「ほら、見ろ。これらの山ほどある記事を。全部お袋だけが一方的に同情され、親父と楢崎おばさんは罵倒されることを旨に書いたのよ」「親父は大学からも処分を受けるそうになっちゃってる。もうすぐ定年退職できるのよ、なんでこんなタイミングで親父の癪に障ることをしたの」私は目を細くして、スマホに映った画像を一枚つづめくった。タイトルの文字が大きいものなら、なんとなく読み取れた。#六十過ぎの老人はなんと、共に困難を乗り越えてきた妻を裏切った。男というのはやはり死んで遺影一枚となって、壁に飾って初めて大人しくなれるものだ##某大学の教授はなんと妻の六十歳の誕生会で、初恋の人にプロポーズ?お年寄りを甘く見てはいけない##六十歳の老婆が路頭で倒れた真相。まさかのことに夫とその愛人に手をかけたのだ!#ホテルで、和樹が片方だけ楢崎のまで跪いた写真、私がケーキナイフを投げた写真、そして私が路頭に倒れた写真まで、バッチリネットなるものにアップされたのだ。今の時代でいうネットというものが発達しているのを知ってたが、そこまでだとも思わなかった。昨日の夜の出来事が、もう人々に知れ渡っている。私は顔をあ

  • 六十歳になった私は自分を取り戻した   第2話

    私は山道を沿って街のほうへと歩いた。雨が止んだのは、その道を半分歩いたところだった。そして急に、和樹から電話がかかってきた。私は寒さで全身が震えながら電話に出たら、和樹の怒り極まった声が耳に入り込んだ。「佐伯文郁、お前は人でなしだ。お前のせいで、理央は心臓発作を引き起こしてる」「彼女は今病院で、それはも衰弱でたまらない。彼女にもし何かがあったら、絶対許さないから」スマホを握っていた私の手は、ほんのりと震えていた。どんなに些細なことでも、楢崎のためなら、和樹は何にもかもを捨てられるのだ。一方で、たとえ私が彼の前で死んだとしても、寝たふりをしているのだと見なされるだろう......息子の隼人を産んだその年、うちは貧乏だから、ちゃんとした産褥期を過ごしていなかったため、私は低血糖値という病気にかかった。隼人が三歳だった時、厨房でご飯を作っていた私は、急に目の前が暗くなって厨房の中で倒れた。まな板の上に置いてあった包丁の位置が悪かったため、ちょうど私の額に当てたので、とんでもない傷口ができてしまったのだ。血が止まれなく流れていたので、驚かされた隼人はわんわんと泣き出した。私は精一杯でやっと起き上がり、電話機まで這って、和樹に電話をした。彼は業をにやした口調で私を叱った。「全く使えないへなちょこだ。どこまでもめんどくさいのだ、自分でなんとかして」と言われた。その後、和樹の同僚が口を滑らしたお陰で、私は事情を知れた。その日は、楢崎と彼女の旦那がみんなを食事に誘ったそうで、旦那と夫婦ラブラブにしていた楢崎を見て、溜まった不満ややけを晴らす術なく、彼はそれを全部私に当たったのだ。ここ数年、彼の心はずっと楢崎のところにあった。以前楢崎の旦那がまだいた頃には、彼は妄想だけを走らせていた。楢崎の旦那が死んで、隼人は思春期に入った少年となったのは、彼はちょうどキャリアの絶頂期にあった頃だったので、楢崎との関係を公にするのは不都合だったから、隠し通すしかなかった。今の彼はもうすぐ定年退職するし、息子ももう結婚して妻子持ちになってる。彼にとってもうなんの壁もないから、堂々と楢崎と一緒になれるだろう。けど、彼は一度たりとも、私の立場になって考えたことがなかった。彼は最初から、私のことを愛したことがないからだ。私と結婚

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