Share

第6話

私は栄子と朝一のフライトに乗って東京へ行った。

浅草で雷門を仰いでいたら、涙がなんとなく頬の輪郭を沿って流れてきた。

若い頃、和樹が一回東京に出張しに来たことがあった。あれは私が妊ったばかりの時のことだった。私は和樹に、浅草で雷門を見に連れて行ってくれと頼み込んだ。

けど、彼は自分が仕事で来てるからと私を断ったのだ。

後ほど、帰ってきた彼は自分が雷門の前で立ち姿で撮った写真を見せてくれた。その時は、私は羨望の気持ちを抱いて、子供を産んだら私は絶対一回雷門を見に行くと思った。

子供が生まれてきて、私もあの家に囚われ、まるで疲れのしない独楽のように、生涯の大半を家に捧げた。

息子が結婚したその年、私は再び雷門を見に行きたいと言った。

でも、相変わらず誰も私の気持ちを気にしてくれなかったし、行かせたりもしなかった。

今私は一人ぼっちで浅草に来て、観光客のなみに混じって、雷門を眺めていた。

栄子は手をあげて私の涙を拭いてくれた。

「もう泣くなって。これからはこの親友の私が、世界中あっちこっち一緒に回ってあげるから」

「以前の文郁はお金に困ってて、いつも私の助けを頼りにしていたが、今の文郁は年を取ったのわりに、金持ちになってる。このような好機私は逃せたりはしないわよ」

栄子を抱き締めていた私は子供のように泣いた。

「うん......」

東京をでた私たちは、伊豆高原に行くために、静岡行きのフライトに乗った。

まるで水にでも洗ったような鮮やかな青さをしている空の下に立ち、私は花柄のスカーフを持ち上げて、カメラに向けて「チーズ」と叫んだ。

栄子は私のことをダサいと言ったそば、自分でポーズをして、真似させてくれた。

いつもと違う栄子を見て、私は肩が止まらなく震えるほど大笑いした。

私たちは和樹がこの一生最も嫌いな鰻までも食べに行った。実際に食べてみると、鰻が全然不味くないことに気付いた。口の中では、ふっくら柔らかい食感だった。

残念だったのは、私はもう年寄りなので、少ししか食べられなかったことだ。

もし時間を十年前まで巻き戻したら、私はきっと二杯か三杯までいけたのだ。

それから、私たちは共にメロンを食べに北海道に行き、湖を見に滋賀に行き、最後には京都の清水寺まで行った。

本堂の前で、信心深く手を合わせていた私は、お天様に健康を祈った。私はま
Locked Chapter
Continue to read this book on the APP

Related chapters

Latest chapter

DMCA.com Protection Status