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第40話

和彦の気持ちは言葉では表現できないほどだった。彼は心の中で急いで言葉を組み立て、紗枝に話しかけようとしていた。

まず謝るべきか?

それとも、これまでの彼女の行方を尋ねるべきか?

それとも何か他のことを言うべきか…

しかし、彼がまだ考えをまとめていないうちに、紗枝は彼のそばを通り過ぎ、一度も彼に目を向けることはなかった。

和彦は呆然と立ち尽くした。

彼が後になって振り返ると、紗枝はすでに車に乗り込み、運転手に優しく行きましょうって言った。

彼女の美しく静かな横顔が視界から消えるのを見つめながら、和彦はしばらくしてから我に返り、携帯電話を取り出して啓司に電話をかけようとした。

しかし、啓司がこれまで紗枝にしてきたことを思い出し、思いとどまった。

彼は私心を抱き、紗枝の車のナンバーをメモし、彼女の現在の住まいを調べるように人を派遣した。

黒いベントレーがゆっくりと道路を走っていた。

紗枝は静かに窓の外を見つめ、心の中には何の動揺もなかった。

ただ不思議だったのは、和彦がどうして西郊墓園に現れたのかということだった。

過去に和彦から受けた虐待が鮮明に思い出され、紗枝は補聴器を外した。

元々は軽度の難聴だった耳が、和彦のせいで今でも時折轟音が響き、感情が高ぶると出血することもある…

彼を憎まないなんてあり得なかった。

紗枝は時々後悔することもあった。あの時彼を助けなければ、こんなに病に苦しむこともなかったのにと。

しかし彼女は、問題を避けるために、逸之を救うことが今の一番重要事項だ。

だから和彦を知らないふりをして、面倒を避けることにした。

何せ、和彦は葵のためなら何でもする男だから。

帰り道、中代美传媒から電話がかかってきた。

「時先生ですか?私たちは先生のことを尊敬しています。最近新しい曲を発表されたと聞きましたが、その著作権を私たちに売っていただけませんか?お金の面では絶対に損をさせません」

中代美メディアは黒木グループに属した最大の芸能事務所だ。

現在、葵はその中のトップの一人だ。

紗枝は貿易会社を経営する傍ら、作曲家としての職業も持っていた。

彼女のペンネームは「時」であり、他の人々は彼女を時先生と呼んでいた。

紗枝が戻る前に、啓司に近づくための準備として、新曲を発表するという噂を流した。

実際に新曲も作っ
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