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第25話

それは偶然だろう!

きっと!

自分を救ったのは紗枝なら、どうして今まで一度も教えてくれなかったの?

もし本当に彼女だったら、ここ数年、彼女にしたこと…

和彦は紗枝の検査報告書を締めた。

自分のオフィスに戻った。

一晩座っていた。

翌朝、和彦は葵に電話をかけた。

「葵、会って話しよう」

プライベートダイニングルームのVIPルーム。

葵は派手な服装をしていた。

ウェイトレスがやってきて、彼女のコートを受け取った。

和彦の視線は彼女の白い腕に落ちたが、その腕が滑らかで傷跡はなかった。

4年前、和彦の車は事故に遭った。

彼は車に閉じ込められ、意識を失い、血まみれになっていた。

危険だと分ったのに、一人の少女が割れたガラス窓の隙間から手を伸ばし、車のドアを無理やりに開けた。

車の窓から手を引き延ばした時、割れたガラスに、長く深い傷口をやられて、縫合しなければならないぐらいだったと院長に言われた…

したがって、回復後、傷跡がまったく残さないとは不可能だった…

和彦に見つめられ、葵は不思議と思って少し心が揺れた。

「和彦君、何があったの?」

和彦は正気に戻り、視線を引っ込め、低い音で言い出した。

「紗枝は死んだ」

葵は唖然とした。

理解できなくてすぐ聞いた。「いつ?どうして突然に?」

口では驚いて信じられないと言って、心の底では今まで感じられない喜びが湧いてきた。

紗枝が死んだ!

それなら、啓司の前にある最後の障害物は消えた。

「今日、失血で助けられなかった」

和彦はゴブレットを手に取り、軽く揺らしてから一口ワインを飲み干した。

ゴブレットのガラス越しに、葵の顔に幸せの光が一瞬光っていたのを見かけた。でも、すぐに消えてた。

「これは宿命かな!」葵はため息をついた。「紗枝は生まれてから他の人が一生努力してもたどり着けない生活をしていたし、それに、家族の権勢により、無理に啓司君と結婚した。死んだのは因果応報だと思う」

因果応報?

和彦は葵の言葉から、初めて彼女の怖さを分かった。

金持ちに生まれて悪かったのか?

そして、紗枝と啓司の結婚はビジネス婚だったことも知っていた。

啓司君を無理強いさせることは誰にもできない筈だった。

しかし、どうしてこれらは葵にとって、死なければならない理由と
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