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第232話

紗枝は結局、夢美から有益な情報を得ることができなかった。

綾子に聞くほど愚かでもなかった。

部屋に戻り、紗枝はスマホを開き、辰夫からのメッセージを確認した。「都合がついたら、電話をくれ」

紗枝はすぐに電話をかけ返した。

間もなく馴染みのある声が聞こえた。「最近、どう?」

「逸ちゃんがいる場所の地図を手に入れた。彼に会うときに、なんとかして彼を連れ出すつもり」

「時間が確定したら教えてくれ。お前一人では心配だ」辰夫が答えた。

紗枝は彼の心配を理解していた。彼は、逸ちゃんを連れて泉の園を出た後、再び捕まることを懸念していた。

「安心して。出る時には必ず連絡する」

ただ、紗枝は辰夫と啓司が正面衝突することを恐れていた。

その後、啓司が彼を報復するのが怖い。

「それならいい。そうそう、お前に頼まれていた件はもう片付けた」

「昇はもう葵がどういう人間かよく分かっている。いつでも啓司に真実を伝えられるし、葵に報いを受けさせることもできる」

この昇ってやつも本当に呆れる。何度も葵に会おうとして逃げ出そうとしたんだ。

昨日はついに逃げ出したけど、病院で葵を見つけた時、彼女に狂人扱いされて追い返されたんだよ。

それが最後の引き金となり、彼は彼女が最初からずっと自分を利用していたことに気付いたのだ。

「彼女が俺を殺そうとしているなら、俺が彼女を滅ぼしてもいいだろう」

紗枝が思考にふけっていると、もう一つのスマホが鳴った。

「少し待ってて」紗枝は辰夫に言い、

もう一つのスマホを確認し、そこには葵からの写真が届いていた。

写真には、彼女が歌手の賞を手にしている姿と、少し離れた場所に立っている啓司が写っていた。

どうやら今日、啓司が言っていた「仕事」とは、彼女に会うことだったらしい。

その後、葵からメッセージが続いた。「紗枝、もう黒木さんをあなたから奪うことはしないわ。だってお互い、彼の心がどこにあるか分かってるもの」

紗枝はスマホを閉じようとしたが、続けてまたメッセージが届いた。「それと、伝えておきたいことがあるわ。私、もうすぐ妊活を始めるの」

妊活という言葉が特に目立った。

紗枝は電話を強く握りしめ、啓司が「子供が欲しい」と言ったのは、葵との子供を望んでいたのだと理解した。

彼女はようやく冷静さを取り戻し、辰夫に言った。「柳沢葵、最近大
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