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第12話

「えっ?!」

紀子がびっくりした。

千葉家の皆が紀子の騒ぎで不快に思った。

エージェントと電話してから紀子の目が真っ赤となった。

彼女は準二流俳優のレベルで徘徊して、今回のドラマで二流俳優を目指して踏ん張るつもりだが......

「どうなったの?」文哉が苛々して聞いた。

「エージェントの話では、投資家がヒロインの私を替えるって」

文哉は眉をひそめた。「僕の記憶では、投資側は樋口グループ傘下の風見メディアだろう?貴方は樋口家の誰かの機嫌を損ねたの?」

「ありえない。樋口家の人、誰も知らないよ」紀子が苛立って否認した。「兄さん、お願い。どうにかして、ヒロインを確保してくれよ。このキャラクタは私がエンタメ業界での展開に非常に重要だ!」

文哉も不思議に思った。

キャラクタが一旦決まると、気軽に変更するのは常識じゃなかった。

その瞬間、彼は突然何かを思い出した。「達也と圭介が幼馴染だと聞いた。達也がずっと海外だったが、二人の仲は非常に良かった。圭介が君を苦しむために達也に頼んだのか......」

「圭介の卑しいやつ!」紀子が怒って言った

文哉の言葉を疑わなかった。

「このキャラクタが欲しいなら、圭介に会って話をするか、それとも、直接達也に会って交渉するか」文哉がアドバイスした。

「お兄さん、どういう意味なの?」

「数日前にお父さんが言ったじゃ、達也が君に好意を持っていた。見合いさせるつもりだった。もし、達也と結婚したら、キャラクタぐらい、簡単だろう?」文哉が正直に説明した。

「いやだ。継母なんて、死ぬほど嫌だ」紀子が断った。「達也と比べ、やはり圭介と話をしてみる」

文哉もこれ以上言わなかった。

どうせ、妹は子供の頃から甘やかされて、彼女がやりたくないことなら、誰に強いられても無理だった。

......

「くしょん」

菫クラブVIPルームに、圭介が突然くしゃみをした。

こんな遅い時に、誰に偲ばれたのか。

「ぼうとしないで、せっかく達也が飲みに来たので、よく飲もうぜ」佐藤信夫が圭介を催促した。

「今夜、僕たちはとことんまで飲もうよ」圭介が急いで言った。

圭介から次から次へと電話されて、達也が彼に粘られて耐えられなかったのか、ついにクラブにやって来た。

ビップルームには達也、圭介、信夫と雄一の四人しかいなかった。

彼らは幼なじみで、達也だけが海外での時間が長くて、4人揃えるのはめったになかった。

この前、4人揃えたのは8年前、達也が帰国した歓迎会だった。

その晩、達也が結構飲んだ。

結局、飲みすぎて彼は姿を消えた。

「あっという間に8年が経ったね」圭介が感情的になり、グラスを持ち上げて、達也と乾杯しようとした。

電話が鳴った。

圭介が少し不機嫌になったが、携帯の画面を見て、出ることにした。「どちらさま?」

紀子が部屋に戻り、圭介への嫌悪感を抑えて、電話を掛けた。

さり気無い圭介の声を聞いて、彼女の顔色が暗くなった。

彼女の電話番号は一度も変更しなかったので、圭介が知らない筈がない。

わざとだろう?!

男はこんなにキモイのか。

「千葉紀子です」

圭介はぽかんとした。

暫くしてこんな人がいたと思い出した。「何か御用?」

「私のことを忘れられないと思うが、こんなことをして、子供っぽいじゃないか?圭介、教えるが、君のような人を見くびるよ。わざと私を苛めてもっと見くびる.....」

圭介は直接電話を切った。

アホ、お酒の邪魔をするな。

携帯の画面を見て、紀子は電話が切られたのを信じられなかった。

圭介が彼女の電話を切ったのか?!

その瞬間、彼女は怒って携帯を捨てるところだった。

彼女は歯を食いしばり、怒りを抑えて圭介にショートメールを送った。「明日尋ねに行く。気を利かせてよ」

圭介はショートメールを一瞥した。

紀子がお姫様病にかかってるほかに、妄想病にもかかったのかと彼は思った。

「誰?」圭介の暗い表情に気づき、信夫が何気なく聞いた。

「千葉紀子」圭介が苛立って答えた。

「......高校時代、彼女のことが好きだったじゃない?どうして、今はその気がなくなったのか?」

「好きとはいえるのかよ?!」圭介は全く気にしていなかった。「若い頃、美しい女の子が皆好きじゃなかったのか?そういえば、僕は鈴木真弓のことがもっと好きだ。どうせ、彼女は一番きれいだった!」

達也がグラスを持った手が力を込められた。

雄一が達也を一瞥して、口元に微笑みが浮かべた。

「真弓と言えば、前日、文哉との婚約パーティーが台無しになったじゃないか?聞いた話だが、千葉家はこれを口実に、真弓との婚約を解除すると言われた」信夫が言った。

「千葉家の人間は彼女の過去を気にするだろう」圭介が飲みながら言った。「男として気にするのは常識だ。気にするなら、真弓とのかかわりを避けるべきだった。当時、千葉家のため、真弓は命を懸けて頑張った。このクラブで、融資のため、彼女が数回飲みすぎて、吐いたり、セクハラされたりしていた。文哉が真弓と結婚しなければ、人間のクズじゃ。結局、彼は畜生の道を選んだ!」

グラスを握った達也の手が益々きつくなった。

「千葉家の話をやめよう。縁起が悪い。飲もうよ!」圭介が雰囲気を変えようとした。

気分が悪くなる話題を彼は長く話さないように気にかけていた。

皆が飲み始めた。

達也だけがさらに沈黙に陥った。

「外でタバコ一服しよう」雄一がグラスを置き、達也を呼んだ。

二人はビップルームを出て、屋外のスカイガーデンに来た。

二人がタバコを吸っていた。

雄一が率先して話しかけた。「僕も真弓に数回出くわした。ある日、彼女が胃の出血で倒れて、僕は病院へ送った」

達也は深くタバコを吸って、ゆっくりと息を吐き、煙が彼の目の前に散って行った。

「でも、見れば分かる。真弓は強い。普通の人なら勝てない」雄一が静かに言った。

達也がすでにタバコを吸い終えた。

驚くほど速かった。

彼はタバコの吸い殻を消して、突然に話題を変えた。「一つお知らせがある。千葉紀子の代わりに、安田礼子を風見メディアが投資したドラマのヒロインにする」

雄一が少し驚いた。「彼女は普段風見メディアに協力しないだが」

「彼女は断られない」すでに抵抗したが、無効だった。「あらかじめ用意して」

「分かった」雄一が答えた。

「彼らに伝えて、僕は先に失礼する」達也が出て行った。

彼は車の中に座っていた。

頭に浮かんだのは、圭介と雄一が話した真弓のことばっかりだった......

「北園マンションへ」達也が突然指示を出した。

「はい」

車は向きを変えた。

達也が北園マンションに入り、真弓の家の前に立ち止まった。

ゆっくりと、彼はドアベルを鳴らした。

しばらくして、ドアが開いた。

赤くなった顔を見て、お酒の匂いを嗅いで、達也が飲みすぎたことを彼女は分かった。

と言うと、彼女と夕食をした後、再び飲みに行ったのか?!

今の達也は非常に危険だと真弓が思った。

真夜中で、孤独の男と女......

彼女がドアを閉める瞬間に。

頑丈で暖かい胸にぶつかり、彼女の体はしっかりと男に抱きしめられた。

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