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隠れていた存在③

last update 最終更新日: 2025-01-22 17:24:36

一ノ瀬漣から貰った名刺に連絡すると3コールで電話に出た。

暇なのだろうか?

「誰だ、この番号を知っているということはプライベート用の名刺を渡した者だ、カナタか?」

なんだ?プライベート用って。

プライベート用の名刺なんて初めて聞いたぞ。

「一ノ瀬漣さんですか?カナタです」

「やはりそうか。それで?この番号に掛けてきた理由は?」

淡々としているなこの人は。

でも聞かないことには始まらない。

「異世界の事で聞きたいことがあります」

「……………………分かった。明日の12時にレーベでいいか?」

レーベって駅前にある喫茶店の事かな。

えらくお洒落な所を選ぶんだなこの人。

「分かりました」

「一人で来いよ」

それだけ言うと電話が切れた。

一人で来いとはどういうことだろうか。

やっぱり誰にも気づかれず僕を始末するつもりか?

春斗に伝えたほうがいいかも知れないな。

携帯で春斗の番号を探す。

春斗(元気バカ)

なんて酷い名前なんだ。

付けた僕が言うのもなんだが神風春斗に直しておこう。

これから長い付き合いになりそうだしな。

「もしもし、どうしたカナタ」

「春斗ちょっと相談がある」

「なに!?相談だと!待ってろ家に行く!」

何を勘違いしたか分からないが、僕に何かあったと思ったのだろう。

すぐに電話は切れたが、とりあえず家で待っておいたらいいか。

しばらくするとインターホンが鳴る。

「カナター!来たぜー!!!」

速いな、電話してから10分しか経ってないぞ?

魔法か?魔法の力なのか?

そんなの僕も使いたいじゃないか!

扉を開けると満面の笑みを浮かべて立っていた。

「相談だって?何でも聞いてこい!」

僕から相談なんてしたことがなかったから相当嬉しかったらしい。

リビングに上がってもらいお茶を出す。

「それで?何が聞きたいんだ?」

「まずはこれを見てくれ」

一ノ瀬漣から貰った名刺をテーブルに置くと怪訝そうな顔を浮かべる。

「なんだこれ?ん?少し魔力を感じるな。これどこで手に入れたんだ?」

「一ノ瀬漣って人がいるんだけど……」

漣との遭遇、その後会話した内容を細かく伝える。

「なるほどな、確かにこれは異世界絡みだ。俺に相談して正解かもしれんな」

「やっぱり?とりあえず明日会うんだけど一人で来いって言われててどうしたらいいか相談したかったんだ」

「一人で来いってのが怖いところだな。実際漣ってや
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    最終更新日 : 2025-01-22
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    夜が明けるとテントを畳み、馬車へと乗り込む。昨日クロウリーさんに教えてもらった邪法を試してみたい所だが、アレンさん達にバレないように使うにはなかなか難しい。できればぶっつけ本番は避けたい所だし、どこかタイミングを見測らって試すしかない。「どこか上の空のようだけどどうしたんだい?」「いえ、平和な時間だなと思いまして」アレンさんが僕の様子を不審に思ったのか問い掛けてきた。僕は適当に返しておいたがバレたのかとドキッとした。また長い馬車に揺られる事数時間。「クロウリー、神族と本気でやり合ったら勝てそうだったかい?」アレンさんの言葉に僕は噴き出した。まさかとは思うが神族を倒そうと思っているのだろうか。「うーむ、そうじゃな……一対一ならば勝てるじゃろうて。ただ、二人を相手にするのは些か厳しいぞ」「なるほど……じゃあとりあえず二人までならどうにかなりそうだね」アレンさんは万が一の事を考えて、二人で神族を抑え込むつもりのようだ。二人までといったのはこっち側の戦力で圧倒的なのが二人だけだからだろう。フェリスさんとアカリも十分強者の部類だが、アレンさんとクロウリーさんに比べれば数段落ちる。ソフィアさんも”黄金の旅団”より劣るという話だし、僕は言わずもがなだ。「ちょっとアレン。神族とやり合うなんて馬鹿げた話は止めて頂戴」「ん?いやいや、もしもの場合さ。流石にボクだって神族とやり合うのは骨が折れるからさ」勝てない、と言わないのはやはり自身の表れか。事実アレンさんに勝てるような人は数える程しかいないだろうし。そもそも神族って名前が付いているくらいだし、神の如し力を持っているのでは?人間の身で勝てる相手なんだろうか。全然神族の強さが想像できないな……。「もしも、ね。じゃあもしも神族が三人以上で襲ってきたらどうするつもり?」「その時はフェリス

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    邪法の効果は分かった。ただ、その邪法を使えばどんな代償を払わなければならないのか。それを聞くのが怖かった。「どうじゃ?なかなか面白い邪法ばかりじゃろう?」「……そうですね。どれも僕が喉から手が出るほど欲しい力です。ただ、その邪法を使えばどんな代償を払わなければならないのですか?」代償を払わず強大な力を得る事は不可能だ。必ず重い代償を払うのが世の常だろう。「そうじゃな……邪法全てに通ずる話になるが、使えば使う程寿命を削る。連発はできんと思うがよい」「寿命、ですか」「そうじゃ。といっても一回使って十年失うような重い代償ではない。とはいえ一年から五年の寿命は失う」「ここぞという時以外は使わない方がいいんですね」一年から五年しか寿命を削らないのであればまだ気が楽かもしれないな。僕はまだ若いし寿命だってまだまだある。それでも調子に乗って使いすぎないようにしないと。「それで、その邪法はどうやって習得するのでしょうか?」「それはもう簡単な話じゃ。邪法を扱える者に見せて貰えばいい」見るだけで覚えられるのか?そんなバカなと言いたかったがクロウリーさんは冗談を言っているような表情ではなかった。「儂は一応使えはするが……見ての通り禁忌を犯してはおらん。つまり、儂の扱う邪法は不完全な代物だと思うといい」「不完全でも使えるんですか?」「もちろん。儂がそれだけ優秀という事じゃ。さっきも言ったが赤眼を持っていなければまず使えん。儂は疑似的に赤眼へと変えてしまう魔術を持っておるのでな」魔導王ともなればもうなんでもありだな。この世の全ての魔法を使えるんじゃないだろうか。「もっと簡単な方法がある。儂の手を握れ」言われた通り手を握ると、突然クロウリーさんの目が赤眼へと変わった。「儂が魔力をカナタに流し込む。邪法の使い方を伝える事ができる特殊な魔法じゃ」「あ、ああ

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