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忍び寄る悪意①

Penulis: プリン伯爵
last update Terakhir Diperbarui: 2025-01-24 18:00:36

2044年1月1日

卒業が近くなり実験に関わるのももうじきだ。

そういえば春斗から連絡がないが、学校が休みのせいで会うこともほとんどない。

一度連絡してみようか。

…………

…………4コール鳴らしても出ない。

待っていると

「はい、フェリスです」

あれ?春斗じゃないのか?

「あの、この番号って春斗で合ってますよね」

「あ、カナタくん!ごめんねちょっと問題があってね」

春斗に問題?何かあったのか。

「とりあえずカナタくん、今から会えるかな?」

フェリスさんからのお誘いだが、あまり嬉しくはないな。

春斗に何があったのか気が気でならない。

「分かりました、駅前のレーベに行ったらいいですか?」

「そうね!そこに今から来てくれる?」

すぐに外行きの格好に着替えて、玄関を出た。

また駅までの道のりで悪寒がしたが気にしていられない。

何か視線のようなものは感じるが、どこから見られているかは分からない。

気の所為と思おう、正直命を狙われる立場にある以上気にした方がいいのだろうが今は春斗のことが気がかりだ。

喫茶店レーベに入ると既にフェリスさんは着いていたようで、一番奥の席から手を降っている。

「すみません、お待たせしてしまって」

「いいわよ、アタシもさっき来たとこだしね」

白い髪に白いコートか、白がよく似合う人だ。

「それで春斗なんですが、何かあったのですか?」

「実はね……」

フェリスさんから聞いた内容は驚くべき内容だった。

少し前に敵である魔族と出会ってしまったようで、その場で戦闘になったらしい。

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    「紹介しようカナタ。彼女はテスタロッサ――」「待て、そこから先は私が言う」アレンさんが目の前の綺麗な女性を紹介しようとすると、その女性は手で制しズイッと僕に顔を近付けてきた。「お前……赤眼だな?」眼帯をしているはずなのに一発でバレた。これは不味いと僕が半歩後ろに下がるとテスタロッサさんは口角を上げる。「クククッ……強さの為に禁忌を犯したか。名は何という」「城ヶ崎、彼方、です」「そうか、カナタだな。覚えたぞ」どういう訳か気に入られたらしく、テスタロッサさんはウンウンと頷いていた。それにしても近くで見ると顔立ちは整っているし、ハリウッドの女優と見間違えそうだ。「それで?私に何の用だアレン。八年も音沙汰が無かったくせにいきなり現れて禁忌に触れた者を連れてくるとは」「いやぁ、それがね。魔神の討伐失敗したって伝えに来たのさ」「……なに?」おっと、いきなり空気が凍ったぞ。アレンさんの言葉にテスタロッサさんが片眉を上げた。「それはどういう事だ。お前がいるから私はこの国を守る事に徹した。逃したというのか?あれだけの戦力を引き連れておいて」「まあ……そうなるね。だから君に手を貸して欲しくて来たんだ」なるほど、それが理由だったのか。でも明らかにテスタロッサさんの機嫌が悪くなっているのはなんでなんだろう。「王の名を持ちながら奴を逃しただと!?」「想像していた以上に厄介でね。君の力を借りたい」「貸す貸さんの問題ではないだろう……魔神を放置すればいずれ世界が滅ぶ。剣聖もあのざまだと……チッ、鍛え直しが必要だな」あ、そういえば吹き飛ばされていったレオンハルトさんはどこに行ったんだ?なかなか戻って来ないけど。「それで、このカナタは有用だということか?」「まあ少なくともそこらの魔法使い

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    ダンジョンの攻略は冒険者の仕事だ。稀に出てくる宝石や価値の高い魔導具などが彼らの生活を支えている。当然収穫のない日もあるそうで、そんな日はツいていなかったとヤケ酒を煽るそうだ。「セル達がお金を稼いでくれる間にボクらはある人の所に行こうか」「ある人というのは?」「着いてからのお楽しみさ」アレンさんはそう言って不敵に笑う。誰かを紹介してくれるみたいだが一体どんな人なのだろうか。僕とアカリはアレンさんに連れられ宿り木から出ようとすると、レオンハルトさんがガチガチに装備を固め立っていた。「お待たせレオンハルト。さて、行こうか」「ふぅ……気が重いが、仕方ない」レオンハルトさんは陰鬱な表情で嫌そうに顔を背けた。これから会う人というのは誰なんだ。剣聖がそこまで装備を固め、嫌がる人物とは一体……。「カナタは心配しなくていい」「いや、そうは言われてもな……」剣聖の顔が強張っているんだぞ。会うなり剣をぶん回すような人だったらどうしようか。街を練り歩く事十分。ある大きな屋敷の前に到着するとアレンさんが門番に向かって手を挙げた。「やあ、彼女はいるかな?」「え?アレン様?は、はいおりますが……」「じゃあ入れて貰えるかな?」「も、もちろんです!……それよりもアレン様は死んだと噂が」「ああ、噂は所詮噂ってやつさ」門番は驚いた顔でアレンさんをまじまじと見つめていた。それを当人は適当に躱し、敷地内へと入った。僕な

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