製薬研究員の彼氏が、私の骨形成不全症の薬を浮気相手に渡した
私は「ガラスの人形」と呼ばれる骨形成不全症の患者だ。恋人の佐藤健一は製薬研究員。
彼に突き飛ばされた時、私は彼のズボンの裾にすがりつき、病院に連れて行ってと必死に頼んだ。
「優子、俺が開発した薬で、もうほとんど治ってるだろう。大げさなんだよ。仕事があるんだ。同僚と少し話すだけなのに、なんでこんなことになるんだ」
彼は苛立たしげに私の手を振り払った。
傍らで田中美咲が佐藤の腕に抱きつき、わざとらしく言った。
「もう、健一先輩ったら、彼女にそんな酷いことしちゃダメですよ」
床に倒れたまま、体のあちこちで骨が折れているのを感じた。肺まで骨が刺さっているようだ。呼吸が段々と苦しくなる中、震える手で救急車を呼んだ。
「先輩、早く行きましょう。研究会に遅れちゃいます。私、先輩に相談したいことがたくさんあるんです」
田中美咲はそう言って、佐藤健一を急かすように連れ出した。
仕事を理由に私を無視するのは、もう何度目だろう。
時間が経つにつれて、口から血が溢れ出してきた。目の前がぼやけてきた時、さっき電話した救急隊から連絡が来た。
「申し訳ありません。道が渋滞で身動きが取れません。できるだけ急いでいますので、もう少し持ちこたえてください」
涙を拭って、佐藤に最後のメッセージを送った。
【私を治してくれてありがとう。この命、もう返すときが来たよ】
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