「素敵……あ、窓から綺麗な景色が見えるのね。ほら、和季。綺麗ね~」 亜季は、はしゃぎながら和季に話しかける。和季もキャッキャッと喜んでいた。 どうやら気に入ったようだ。 すると櫻井課長は荷物を下ろして、一息入れる。「ふぅ……いろんな意味で疲れた。さてと、浴衣に着替えるか。その後に旅館や庭を見学しながら、温泉にでも入りに行くか」 と、ため息混じりにそう言ってきた。「そうですね~」 亜季は申し訳ないと思いつつも、温泉に入るのが楽しみだった。 そして浴衣に着替えて、大浴場に向かうことにした。 和季は、いつものように櫻井課長に任せる。亜季は1人で、のびのびと女湯に入っていく。中には年配な女性が多かった。 大きな湯船と外には露天風呂が。露天風呂から見える海は、とても綺麗だった。 亜季は露天風呂に入る前に体を洗おうとした。そうしたら隣の男湯から、和季のギャン泣きが聞こえてきた。(あ、また嫌がっている……) いつものことなのだが、恥ずかしくなるほど泣き声が大きかった。「あらあら、元気な赤ちゃんだこと」 年配のお婆さんがクスクスと笑いながら話していた。 亜季は頬が熱くなってしまう。迷惑に思われたかもしれない。「すみません。私の子なんです。今、主人が入れていまして……」「あら。あなたのお子さんだったの?」「……はい。どうも着替えが嫌みたいで」 申し訳なさそうに周りの人に謝った。すると向こうから、「ひぎゅああ……まんま~」と泣き叫ぶ声が。「こら。和季。そこでママを呼ぶな。俺が変に思われるだろ!?」 和季が泣きながら母である亜季のことを呼んでいたため、櫻井課長は戸惑っていた。 苦労している櫻井課長の顔が目に浮かんで、亜季は申し訳ない気持ちになってくる。 これでは、ゆっくり入れないだろう。「フフッ……あなたも大変ね。でも男の子は、あれぐらいではないと」「そうそう。ウチの子もあれぐらい元気に泣いていたわよ」 年配の女性たちが笑いながらも、快く許してくれた。 それどころか逆に励ましてもらったり、色々とアドバイスをしてくれた。 こういう交流も温泉旅行の楽しみの一つだろう。 温泉から出ると、櫻井課長も和季を抱っこして男湯から出てきた。「お疲れ様。隣からでも和季の泣き声が聞こえていたわよ。ごめんなさい……入れてもらって」 亜季は謝り
Last Updated : 2025-04-06 Read more