「奥様、旦那様が戻られました」「本当?」星奈【白石星奈(しらいし せいな)】はデザイン画を描いていたが、その言葉を聞いて目を輝かせ、目の前のカーテンをさっと開けた。クーロナンは別荘の敷地内へと滑り込む。彼女は車の中にいる男を見つめた。端正で彫りの深い顔立ち、切れ長の目、仕草の一つ一つに滲む帝王のような威厳。あの人だ!星奈の心臓が高鳴る。特に、彼が帰ってきたときにすることを思い出すと、ますます顔が熱くなった。毎回のキスは、どこまでも情熱的で濃厚。緊張と羞恥で、彼女は思わず息を呑む。その時、部屋のドアが開いた。きちんとスーツを着こなした男が入ってくる。星奈は微笑みながら視線を向けた。「定律さん」「来い」男は骨ばった手でネクタイをゆるめる。星奈は恥ずかしさを押し殺しながら、そっと歩み寄った。次の瞬間、彼の腕に抱き寄せられ、深く激しいキスをされた。星奈は「んん……」と小さく声を漏らしながら、彼の熱に溺れていった。そして、そのままベッドへ運ばれ、容赦なく求められた。一見すると理性的で知的な彼だが、こういうときだけはまるで違う。彼女を泣かせるまで決して手を緩めないのだから。星奈は目を閉じ、ひたすら彼の愛を受け止めた。今夜は、いつも以上に激しかった。とうとう彼女が泣き出してしまうまで、彼は満足することはなかった。そして、ようやく満たされた彼はベッドから離れ、布団をめくり上げると、長い脚で浴室へと向かった。シャワーの音が響く。星奈は、全身の力が抜けたようにぐったりとベッドに横たわった。彼女と定律【羽成定律(はなり さだのり)】が結婚して二年。しかし、それは恋愛結婚ではなかった。最初は、父親に強引に結婚させられたのだ。だから当初の彼は彼女をあまり好いていなかった。けれど彼女は彼が好きだった。必死に追いかけ、誠心誠意尽くし続けた。そうして、ようやく彼の心が動いたのだ。今夜の彼の激しさを思い出すと、胸が震える。でも、同時に甘い余韻も感じていた。きっと、これからの二人の関係は、もっともっと良くなるはず。いつか、定律の子供を産んで、幸せな家族になれたら……そんなことを考えていた時——突然、浴室のドアが勢いよく開かれた。定律がバ
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