個室に着くと、優里と茜たちは既に到着していた。「何がそんなに面白かったの?」と優里が尋ねた。清司は笑った。「別に、ちょっと面白い人に会っただけさ」食事の後、智昭と茜は家に戻った。車を降りると、茜は喜んで二階へ駆け上がった。「ママ、ママ~」田代さんは物音を聞いて、キッチンから出てきた。「奥様はまだお戻りではありません」「えー?」茜は落胆した。「ママ、最近どうしてこんなに忙しいの?」不満を漏らしながら、彼女は二階へ上がっていった。智昭が立ち尽くしているのを見て、田代さんが「旦那様?」と声をかけた。智昭は首を振った。「何でもない」そして、彼も二階へ上がった。その夜、智昭は玲奈が帰ってこないことに気付いた。翌朝、茜は起きると、また玲奈の作った朝食が食べられると思っていた。テーブルに並んでいる朝食が玲奈の作ったものではないと分かると、眉をひそめた。「ママ、朝ごはん作らなかったの?」「奥様はお家にいらっしゃいません」茜は不思議そうに「ママ、家にいないってどこに行ったの?またひいおばあちゃんの家?」「たぶんそうでしょうね」玲奈は何も言っていないので、田代さんも断言はできなかった。茜は智昭を見た。「パパ……」智昭は落ち着いた様子で「知りたければ自分で電話してみたら」「じゃあ、夜にでも聞いてみる」……一方。玲奈は朝食を済ませてから会社へ向かった。会社に着くと、礼二が新製品の開発について玲奈と話そうとした時、彼の携帯が鳴った。相手が尋ねた。「御社は最近、藤田家の方を怒らせましたか?」「何?」礼二は驚いて玲奈を見つめ、スピーカーフォンにした。「藤田家の方が御社に圧力をかけようとしていましたが、こちらで止めました」玲奈は驚き、拳を握り締めた。あの夜の宴会の後、智昭は彼女と礼二が優里をいじめたことについて問い詰めてこなかった。追及する気がないのかと思っていた。違った。追及しないのではなく、彼女と言い争うのが面倒なだけで、行動で示したかったのだ。優里に手を出したのなら、その代償を払わせると!礼二もやっと事情が飲み込めた。彼は玲奈の手を軽く叩いた。「心配するな。うちは政府との関係が深いから、手出しはできないはずだ」「うん」それが幸いだった。でなければ……
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