*朋代と仕事帰りに会えることになり、近くのカフェで落ち合っていた。先日のことを相談しようか迷ったけれど、心に閉まっておくことができなくて朋代に相談した。「………久実のこと、好きなんじゃないの?」確信ある声に私は一つ頷いた。「そうかもしれないね」赤坂さんの先日の態度で、薄々と気がついてしまった自分がいる。私なんかを好きになるはずがないと思っていたけれど。赤坂さんは本当に優しい人だから、私を励ましている間に情が移ってしまったのかも。「いいじゃない。両想いなんだから」ニヤニヤ笑いながらからかうように言ってくる朋代。本来であればとてもいい報告に聞こえるかもしれないけれど、私の場合は違う。笑って惚気話をしている状況ではないのだ。「実は、検査結果があまりよくなくて……」「え?」カフェラテを一口飲んで真剣な表情で朋代を見つめる。「もしも、付き合って……。私が早く死んじゃったら、可哀想じゃない? あの性格なら一生、他の女と付き合わないとか言いそうだし」明るい口調で言ったけれど、かなり切なかった。きっと赤坂さんは、もしも付き合った彼女が死んでしまったら……。時間があればお墓に来ているだろうと思う。そんな悲しい姿を想像するだけでたまらなく切ない。だからこそ、情が移りすぎないように、もう会わないほうがいいかなと思っている。「ごめん、久実。私、何もわかってなくて」朋代は申し訳無さそうな顔をして、私を見ている。「謝らないで。仮に……彼が私を好きになってくれていたとしたら、幸せだったよ。あんなに凄い人が好いてくれたなんて、生まれてきて良かったと思えるし」「もっとワガママになりなよ。付き合えばもっと幸せな思い出を作れると思う」私は、首を横に振った。「いいの」「久実…………」「生きている間に心から好きだと思える人に出会えたことが、素晴らしい出来事だったから。あの人を思って切なくなって温かい気持ちになって。色んな感情を教えてくれただけでも感謝だよ」「普通のことを、幸せだと……思えることを、教えてくれた久実に私は感謝してる」いつも元気でハキハキしている朋代が目に涙を浮かべていた。
Last Updated : 2025-01-23 Read more