All Chapters of 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない: Chapter 251 - Chapter 260

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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』50

*朋代と仕事帰りに会えることになり、近くのカフェで落ち合っていた。先日のことを相談しようか迷ったけれど、心に閉まっておくことができなくて朋代に相談した。「………久実のこと、好きなんじゃないの?」確信ある声に私は一つ頷いた。「そうかもしれないね」赤坂さんの先日の態度で、薄々と気がついてしまった自分がいる。私なんかを好きになるはずがないと思っていたけれど。赤坂さんは本当に優しい人だから、私を励ましている間に情が移ってしまったのかも。「いいじゃない。両想いなんだから」ニヤニヤ笑いながらからかうように言ってくる朋代。本来であればとてもいい報告に聞こえるかもしれないけれど、私の場合は違う。笑って惚気話をしている状況ではないのだ。「実は、検査結果があまりよくなくて……」「え?」カフェラテを一口飲んで真剣な表情で朋代を見つめる。「もしも、付き合って……。私が早く死んじゃったら、可哀想じゃない? あの性格なら一生、他の女と付き合わないとか言いそうだし」明るい口調で言ったけれど、かなり切なかった。きっと赤坂さんは、もしも付き合った彼女が死んでしまったら……。時間があればお墓に来ているだろうと思う。そんな悲しい姿を想像するだけでたまらなく切ない。だからこそ、情が移りすぎないように、もう会わないほうがいいかなと思っている。「ごめん、久実。私、何もわかってなくて」朋代は申し訳無さそうな顔をして、私を見ている。「謝らないで。仮に……彼が私を好きになってくれていたとしたら、幸せだったよ。あんなに凄い人が好いてくれたなんて、生まれてきて良かったと思えるし」「もっとワガママになりなよ。付き合えばもっと幸せな思い出を作れると思う」私は、首を横に振った。「いいの」「久実…………」「生きている間に心から好きだと思える人に出会えたことが、素晴らしい出来事だったから。あの人を思って切なくなって温かい気持ちになって。色んな感情を教えてくれただけでも感謝だよ」「普通のことを、幸せだと……思えることを、教えてくれた久実に私は感謝してる」いつも元気でハキハキしている朋代が目に涙を浮かべていた。
last updateLast Updated : 2025-01-23
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』51

***久実二十四歳 赤坂三十歳  久実side十二月に入り、お父さんとお母さんが神妙な顔で病室にやってきた。嫌な予感がしたけど私は逃げずに話を聞くことにした。「二人そろってどうしたの?」「久実。落ち着いて聞いてほしいことがある」個室だったから、思う存分に話せる。私はだるい身体と戦いながら生きている状態だった。「久実の心臓は……手術をしても、もう……難しい」お父さんが苦しそうに言葉を紡いだ。「………そうなんだ」意外にも冷静に聞けていた。まるで他人事のように。「移植しかない」「…………移植?」「ただ、日本ではドナーが少ないから。できればアメリカに行かせたいと考えている」莫大な費用がかかる。お父さんもお母さんも一生懸命働いてくれていても、到底無理だ。今まで苦労してきただろう。もう、これ以上大変な思いはさせたくない。「いいよ。日本で見つかるまで待つよ」「何を言ってんだ! 父さんも母さんもできるところまで頑張るから、久実も諦めないでほしい」「そうよ。もう、募金活動もしているの。久実は大事な存在なの」二人が真剣に訴えてくれて、心が揺れる。――長生きしたい。移植が成功すれば人並みに生きられる可能性が高くなる。それに、子どもを産んでいる人もいると聞いたことがあった。「いくら……必要なの?」「一億だ」「そんなお金……普通の家族では無理でしょう!」「色んな方の寄付であと七千万あれば」絶望的な気分になった。だけど、私が取り乱すわけにもいかなくて……。黙って目を閉じるしかなかった。
last updateLast Updated : 2025-01-23
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』52

年末年始は病院で過ごし、気がつけば二月になっていた。私は病室でぼんやりとテレビを見ている。二月七日、一日限定でCOLORはバレンタインライブをしたようだ。へぇー……紫藤さん、コンサートでプロポーズしたんだ。公開プロポーズなんてロマンチック。一般人の女性との純粋な恋愛だったと情報番組で伝えていた。どんなに苦しい恋愛だったとしても、二人に未来があるなら希望が持てる。私に……未来なんてない。いつも明るく強がっているけど、本当はものすごく怖い。しばらく入院生活が続いているが赤坂さんには、伝えていない。メールが届いても『忙しい』と言ってごまかしている。身体を起こして手鏡で自分の顔を見ると青白かった。もう、私の命は短いのかもしれない。治療をしてもよくならないし。入院期間はいつもよりも長い。薬も変えてばかりだし。短い人生だったな……。でも、赤坂さんという存在に出会えて、素敵な思い出を作ってもらえて。――幸せだったと思う。赤坂さんがはじめてお見舞いに来てくれた時に、プレゼントしてくれたブランケットを抱きしめる。そうすると、安心するのだ。もしも、叶うなら。長生きをして赤坂さんのおじいちゃんになった姿を見てみたい。きっと、年齢を重ねても素敵なんだろうなぁ……。
last updateLast Updated : 2025-01-23
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』53

赤坂sideしばらく久実は会ってくれない。電話もメールも回数が減ってしまった。俺からは頻繁に連絡を入れるが……返事がない。俺は仕事が順調でジュエリーブランドのプロデュースをしたり、色んなことをさせてもらっている。次の撮影スタジオに向かう車の中で、ふと空を見ると高く澄んでいた。東京に春が訪れていたことにも気がついていなかった。四月になっていて、もうすぐ久実は二十五歳になる。俺は懲りずに久実を思っていて、次に会うチャンスがあれば……しっかりと告白するつもりでいた。どんな結果になっても、俺は久実に自分の気持ちを伝えようと思っている。いつまでもこのままじゃいけないと思うから。仕事が終わり楽屋にいる時、なんとなく嫌な予感がした。――久実は元気で過ごしているのだろうか。冬に届いたメールに――赤坂さんも、きっと幸せになるよ。と書いてあったのだ。ずっと会っていないし本当の状況はわからない。もしかして、入院しているのではないだろうか。久実は俺に嘘をついているかもしれない。スマホに登録されていた久実の母さんの番号を選んだ。十九時。まだかけても迷惑じゃないだろうと思って画面にタッチした。五コール数えたところで通話が開始される。『もしもし』「赤坂です。夜分遅くに申し訳ないです」『赤坂さん。お久しぶりです』「あの……久実さんはお元気ですか?」『えっ?』驚いた声が聞こえてきた。まるで状況を知らないのですか? と言いたそうな声だった。やはり、久実は元気ではないのかもしれない。体に流れている血液が凍っていくように不安で冷たくなった。「あの……。久実さん忙しいみたいで返事があまりなくて。ちょっと心配になってしまいまして」『………そうですか。心配かけたくなかったのでしょうね』「心配?」母親は言いづらそうにしながらも打ち明けてくれた。『ずっと入院しているんです。ドナー待ちなんですが、なかなか日本では順番が回ってこないのです。それなら少しでもチャンスがあるアメリカに行こうと思っていまして。アメリカに行く費用を募金しているところなんです』握り締めていたスマホを落としそうになってしまった。ドナー待ちって。そんなこと、聞いてなかった。「え、あの……久実さんの心臓は……」動揺して声が震えてしまう。『もう、移植しかないんです』「そんな……。
last updateLast Updated : 2025-01-23
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』54

久実の家に着いたのは二十一時を過ぎたところだったが、ご両親は快く中に入れてくれた。L字に配置されたソファーに座って話を聞かせてもらう。移植しないとあと半年くらいしか生きられないことを知った。「子どもであれば比較的募金は集まりやすいのですが……。いや、それでもものすごく大変なんです。久実は、もうすぐ二十五歳になるのでなかなか集まらないのが現実なんです」悲しそうな顔をした父さんの顔を見られないくらい、俺も悲しかった。「あと、どのくらいなんですか?」「七千万です。……もう、無理かもしれません」「お父さん、そんなこと言わないで」母親も涙を浮かべていた。一日も早く移植をしてほしい。ここで俺が出るところじゃないかもしれないが、居ても立ってもいられなかった。「俺が残りを出します」「……そんな大金、返せないです。何年もかかりますし」父さんは慌てている様子だった。俺がそこまで言うとは思わなかったのかもしれない。「事務所の力を借りて募金活動をすればいいかもしれませんが、会議をかけてもらってもやってもらえるかわからないし、時間がかかりすぎます。俺は一日も早くアメリカへ飛んでもらいたいんです」ソファーから立ち上がった俺はゆっくりと床に正座をした。久実を失うと思うと、怖くてたまらない。男のくせに涙があふれて唇が震え出す。「お願いします……。三日で用意するので、久実さんを助けてください」深く頭を下げると、久実の父さんは慌ててソファーから降りてきて、俺の肩をつかんで体を起こした。目が合うと父親も涙を浮かべている。「力ない父親で情けない。少しずつでも返しますので久実を助けてください」「よろしくお願いします」母さんも頭を下げてくれた。「はい。ただ、久実さんには言わないでください。俺が出したと知ったら行かないって言うかもしれないので。気を使いすぎる、いい子だから……」俺は家に帰るとマネージャーに連絡を入れた。「どんな仕事でもやるから、とにかく仕事取ってきてくれ」『え……はぁ。事務所の許可が降りる範囲であれば』「いいから、わかったか?」二日後に俺は金を振り込んだ。久実が助かるなら何だってする。
last updateLast Updated : 2025-01-23
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』55

久実side  「資金が集まった? そんな急に?」「ええ。これで久実も助かるかもしれないわね」満面の笑みを浮かべて洗濯物を片付けているお母さんを私はベッドの上でじっと見つめる。アメリカへ行けるのは嬉しいけれど……今まで簡単に集まらなかった寄付がどうして突然揃うわけ?何かがおかしいと思って問い詰めることにした。だって大切なお金だから気になって仕方がなかったのだ。「お母さん」「なーに?」「やっぱりおかしいよ。不正ルートで手に入れたお金なんじゃないの?」「……まさか」動揺するとお母さんは目を合わせなくなる。「教えて」「…………何を?」私の質問をかわそうとしているのが伝わってきた。ということはやはりただの寄付で集まったお金ではないのだろう。「誰から寄付してもらったの?」お母さんは私を見て手を握ってきた。その手は冷たくなっている。「お願い。どんなことがあってもアメリカへ行って手術を受けてほしいの」「…………」「言うなって、言われているのよ」「もしかして、赤坂さん…………?」お母さんは明らかに目の色を変えた。「久実は赤坂さんとお付き合いしているの?」「まさか。手に届くような人じゃない」「そう……」何かを考えたような表情したけど私の目をまっすぐと見つめてくる。「ちゃんと手術を受けてくれるわね?」「うん」手術を受けることができるのは嬉しかったけれど、赤坂さんに迷惑をかけてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいだった。「少しずつになるけど返すつもりでいるの」「…………私も働けるようになったら返す」「うん。一緒に頑張ろうね」その日の夜。私はスマホをじっと見つめていた。消灯時間は過ぎているけれど眠れない。赤坂さんにお礼をしたくて文章を作るけど、なかなか言葉がまとまらなかった。『赤坂さん。入院していることをずっと言えずにごめんなさい。そして、アメリカへ行けるようにしてくれてありがとうございます。一生かけても足りないくらいの感謝です。絶対に元気になって戻ってきて、社会復帰したら返します。ファンとアイドルの関係なのに、ここまでしてくださって申し訳ないです。大事な赤坂さんの人生です。私に費やすことはやめてください。久実』ずっと、返事を待っていたけれどスマホが光ることはなかった。
last updateLast Updated : 2025-01-23
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』56

赤坂さんはテレビや雑誌に出まくっている。もしかすると、お金を稼ぐためなのではないかと思ってしまった。本当に、申し訳ない。五月に渡米する予定が決まった。今日は二十五歳の誕生日だった。ナースもドクターも天からのプレゼントだと言って喜んでくれた。「久実、誕生日おめでとう」お母さんは私に可愛いバッグをプレゼントしてくれた。真っ白な病室に目立つ真っ赤なバッグ。これを早く使える日がくればいいなと胸に期待が膨らむ。「四月十七日。十六時七分に久実が生まれたのよ。本当に幸せだった。すごく小さくて可愛くて一生、守っていきたいと思ったの」お母さんは誕生日のたびに、この話をしてくれる。「これからも、お母さんの大事な久実でいてね。一緒に頑張ろうね」お母さんは午後からパートがあるらしく帰った。朋代や赤坂さんの妹の舞さんなど、バースデーメールが届いた。ほっこりした気持ちでいると、足音が聞こえた。トントンと開いているドアの横の壁を叩かれて見ると、赤坂さんが立っている。かなり久しぶりに会う赤坂さんは、痩せた感じがした。「おう」「赤坂さん…………」「誕生日だろ? 会いに来てやったぞ」頭をぐしゃぐしゃに撫でられる。ソファーの隣にある椅子に座ってプレゼントを渡された。細長い箱だ。なんだろうと思っていると「見てみろ」と言われてゆっくりリボンを解いた。ゴールドの包装紙を外して、箱を開けると……ネックレスが入っていた。「俺のファンだったらわかると思うけど」「…………赤坂さんがプロデュースしたジュエリーブランドの、一点物」「大正解。さすがだな」世の中にはかなりの額を払ってもこれを欲しがる人が大勢いるのに、私なんかにいいのだろうか。パールを包むようにダイヤでハートを作っている。「これ、初めて久実に会った時の髪型を参考にしたんだ」ツインテール……。まさか、私をイメージしてくれたなんて。感動しすぎて涙があふれてきた。私は、赤坂さんに何かを返せているのだろうか。
last updateLast Updated : 2025-01-23
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』57

「おー嬉しいか」「うん」楽しそうに笑っている赤坂さん。私は……赤坂さんのことが、大好きだ。好きで、好きでたまらない。ファンという枠を超えて、こんなにも好きになっていいのだろうか。赤坂さんのことが、大好きだ。「なかなか連絡できなくて悪かったな」「ううん。忙しかったんだよね」「まあな。男は稼ぐ生き物だろ」長い足を組んだ赤坂さん。「あのね、アメリカに五月三日に行くことになったの」「そっか。いよいよ、だな」好きだと言いたい。けれど、それはちゃんと帰って来てから言いたい。だから、今はぐっと堪える。「なぁ。それ、つけてくれない?」「……こ、こんな恐れ多いもの……無理。家宝にする」「あ? 馬鹿か。つけるためにアクセサリーはあるんだっつーの」貸せと言われて赤坂さんはネックレスを持った。前から手を回して、抱きしめるような形でつけてくれる。けれど、なかなか終わらない。あまりにも近い距離に耳が熱くなって、心臓が激しく動き出す。赤坂さんの爽やかであり男っぽい匂いが鼻を刺激する。それは、私の心を惑わすアロマのようだ。「ま、まだ?」冷静なふりをして質問する。「まだ」すごく密着していて、ドキドキする。赤坂さんの硬い胸におでこがくっついてしまう。だってネックレスをつけるなんて数秒で終わるのに、この体勢のままでしばらくいるのだから、鈍感な私でもわざとなんだと気がついてしまう。「……まだ?」「あーもう少し」「もうちょっと付けやすく作ったら?」「俺のプロデュースした物に文句があるって?」「いいえ」圧力、ハンパない。だけど、こういうところも好き……。やっとつけてくれた。赤坂さんは離れて目を細めて見ている。「似合う」「本当?」「世界一、似合う」手鏡を、引き出しから出して覗き込んで見ると、キラキラと光っている。病衣には似合わないけど、すごく嬉しくて赤坂さんに向かって微笑んだ。「ありがとう。男の人からアクセサリーをもらうなんて、この人生でないと思ってた」真剣な表情で私を見ている赤坂さん。今までに見たことない男らしい顔をしている。ますます、好きが増えていく……。「……………あのさ、戻ってきたら大事な話があるから」「何?」「気になるか?」「とっても」「じゃあ、必ず生きて帰って来ること」「……うん」泣きそう。
last updateLast Updated : 2025-01-23
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』58

*移植することを報告したら、色んな人がお見舞いに来てくれた。会社の人や、朋代をはじめとする学生の仲間たち。皆、元気づけてくれるけど……寂しさもこみ上げてきた。もしかすると、もう会えないかもしれないとついつい思ってしまうのだ。朋代がお見舞いに来てくれて、他愛のない話をする。「実は来年辺り結婚しようかと思ってて」「うっそー! おめでとう」「久実、結婚式で友人代表スピーチしてくれるよね?」笑顔が消えてしまう。だけど、慌てて笑顔に戻して「もちろんだよ」と明るく言った。未来の約束が増えるたびに心が苦しい。病気じゃない人だって明日はどうなっているかわからない。けれど、皆、当たり前に生きすぎている。本当は生きることって、とても素晴らしいことなんだ。「おめかしして、結婚式行かなきゃなぁ」「久実のウエディングドレス姿もきっと可愛いと思うよ」「そうだね。手術が成功してその夢が叶ったらすごく嬉しいな」「自分の夢は強くイメージすると叶うって言うから。私もイメージしておく」朋代が励ましてくれて気持ちが少し軽くなったような気がする。
last updateLast Updated : 2025-01-23
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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』59

そして、アメリカへ行く前日。赤坂さんは時間をこじ開けて会いに来てくれた。約束を必ず守ってくれる、赤坂さん。いつものように、口元をくいっと上げて笑みを浮かべている。手術が失敗したら……。臓器が私に合わなかったら……。もう日本へ帰って来ることができなかったら……。色んな不安が押し寄せてくる。「赤坂さん、今まで本当にありがとう」思わず最後の挨拶をしてしまった。「あ? 最後の別れみたいじゃん。帰って来たらいっぱい遊んでくれよ?」「…………うん」「舞も言ってたし。時間が取れたら温泉行きたいな」「赤坂さん、一緒に入ってくるから嫌」クスクス笑っている。「今度は綺麗に洗ってやるよ」「遠慮しておきます」「そんなに俺のこと嫌わないでくれ」こうやって何でもない会話をしているのが一番幸せだ。この時間がまた来ることを今は願って挑んでくるしかない。「いっぱい、いっぱい、勇気をありがとう。赤坂さん」「こちらこそ。支えてくれて感謝してる」赤坂さんは立ち上がって私の額にチュッと口づけて病室から出て行った。
last updateLast Updated : 2025-01-23
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