その夜。お父さんとゆっくり話をすることにした。食事を終えてソファーに座りながら、私は気持ちを伝えていく。「赤坂さんに結婚を前提に付き合ってほしいと言われたの」「………」お父さんはお茶を一口飲んで気持ちを落ち着かせているようだった。「私は赤坂さんを男性としてすごく好きなの」「気持ちはわかるが賛成できない」「どうして?」「反対する理由はいっぱいある。赤坂さんのような素晴らしい方だと、周りに女性がいっぱいいるだろう。久実が悲しむ姿を見たくない。お父さんは久実が可愛いんだ」「でも……彼はそんな人じゃない。 たくさん 女性が寄ってくるけど、しっかりしているところはしっかりしているの」「一番の理由は……援助してもらった相手だからだ」お父さんの本心。私はお父さんの立場も考えると強く言い返せなかった。「お父さんとお母さんに財力がなくて申し訳ないが、恥をかかせないでくれ」育ててくれた両親を悲しませるわけにもいかない。私が恋心を消すしかないのだろうか。「久実はきっといい人に出会えるから」胸が張り裂けそうだった。赤坂さん以外に誰かを愛するなんて考えられない。
Last Updated : 2025-01-23 Read more